皆さんは、ねじの強度を考えたことはありますか?
機械部品に限らず、ねじは代表的な固定方法の一つですよね。
今回はそんなねじの強度について解説していきたいと思います。
前提条件
今回はねじ自体が破断しないかの”強度”について検討します。
ねじでどのくらい締結できるかの”締結力”については、以下の記事で解説しています。
また、ねじにかかる荷重はせん断方向として考えます。
理由としては、ねじは引張方向の荷重には強く、せん断方向の力に対しては弱いので、引張方向とせん断方向に同じ荷重をかけたとしても、先にせん断方向で破断します。
ねじの強度計算
ねじの強度計算として、安全率という値を計算します。
ねじ1本あたりの具体的な数式は以下のようになります。
$安全率=\dfrac{τ_a}{τ}$
ただし、$安全率=\dfrac{τ_a}{τ}$
$τ$:発生するせん断応力[$Pa$]
$τ_a$:許容せん断応力[$Pa$]
$F$:ねじにかかるせん断方向の荷重[$N$]
$A$:ねじの断面積[$m^2$]
この安全率は、実際に発生する荷重に対して、何倍まで耐えられるかを示した値になります。
安全率が大きいほど強度があることを示しています。
使用する製品によって安全率は異なりますが、今回は例として安全率3で考えます。
安全率については以下の記事で解説しています。
ねじの許容せん断応力と引張応力の関係
ねじの許容せん断応力について考えてみます。
このせん断応力はねじの材質によって決まります。
そしてせん断応力と引張応力の間には以下の関係があることが知られています。
$τ_a=0.6σ_a$
$σ_a$:ねじの引張応力[$Pa$]
この計算式で係数は0.6となっていますが、この係数はミーゼスの応力から計算される理論値です。
代表的な材質については、以下の表に示します。
この表の値が大きいほど、大きい荷重に耐えられることを示しています。
鉄ねじに荷重が発生した場合の例
具体例として、M5の鉄ねじであればどのくらいの荷重まで耐えられるのかを考えます。
数式①を式変形すると、以下のようになります。
$F=\dfrac{τ_a・A}{安全率}$
この式①’を用いて、安全率3として計算すると、$F=1649N$となります。
このように、ねじ径と材質が分かれば、対応できる荷重を想定できます。
せん断荷重が大きい場合の対策
もしねじが荷重に耐えられない場合、対策としては3種類考えられます。
- ねじの本数を増やす
- ねじの径を大きくする
- ねじの材質を変える
順に説明していきます。
ねじの本数を増やす
まず本数を増やすことが考えられます。
例えば、式①’の例でM5のねじを2本使えれば、$F=3298N$まで耐えることができます。
ただし、本数を増やすスペースがあるかという点と、加工・組み立ての時間が増えてしまうデメリットがあるので、注意が必要です。
ねじの径を大きくする
ねじの径を大きくすることができれば、同じねじの本数で対応することが可能です。
例えば、ねじ径をM6にできれば、$F=2375N$まで許容でき、M8にできれば$F=4222N$まで許容できます。
最も一般的な対応方法として考えられる手段になると思います。
ねじの材質を変える
一般的には、ねじの本数や径を変えることが有効ですが、ねじの材質を変えるという方法も考えられます。
例えば、ねじを鉄からステンレスに変えることができれば、$F=2042N$まで耐えることができます。
ただし、この方法ではねじと締結材の相性や締付トルクなどの別の問題が発生する可能性もありますので、最も注意が必要な変更方法となります。
材料とねじ径による違い
それではねじの径や材料によって、どのくらい異なるのでしょうか?
各ねじ系と材料の違いと強度の関係を表したものが、以下のグラフになります。
縦軸はねじ1本で耐えられる荷重(安全率3)を、横軸はねじの径を表しています。
結果を見ると、ねじ径と許容荷重は二次関数のような関係となっています。
これは、ねじの断面積はねじ径の二乗で計算するためです。
また、各材料の強度の違いは、ねじ径が大きくなるほど顕著に表れることが分かると思います。
つまり、ねじ径が大きいほど材質には注意が必要になります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はねじの強度について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- ねじはせん断方向の荷重に弱くなっている
- 許容できる荷重は、安全率を除くとねじの径と材質によって決まる
- 材料の違いは、ねじの径が大きくなるほど顕著に表れる