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材料力学

金属の疲労とは?【材料力学的解説】

皆さんは金属の疲労や疲れという言葉を聞いたことはありますか?

人が動いて疲れるということと同様に、金属にも疲れという現象が存在します。

今回は金属の疲れ強さについて解説したいと思います。

金属の疲れとは?

例えば、新品の金属バットを買ったとしましょう。

このバットでボールを1回だけ打ったとしても、さすがにバットが壊れることはないですよね。

しかし何万回もボールを打ち続けたらどうでしょうか?

ある程度弱い力だったとしても、ボールを打ち続ける内に段々と金属にダメージが蓄積されていきます。

そしてある程度まで打つことで、金属に凹みができたり、ヒビが入ったりと破壊してしまうことがあります。

これが疲労破壊という現象です。金属の疲れと呼ばれることもあります。

疲れ強さの考え方

バットであれば、そこまで大事故になることはないかもしれませんが、機械だっだらどうでしょうか?

今まで問題なく使えていた家電や車が、ある日突然壊れたら大問題ですよね。

そのため、複数回の繰り返し荷重がかかっても破損しないような設計がされています。

そのときに使用する値が疲れ強さという値です。

まず以下のグラフを見てみましょう。

応力振幅と繰り返し回数の関係

このグラフの横軸は繰り返しの回数を、縦軸は応力振幅の大きさを表しています。S-N線図とも呼ばれています。

応力振幅とは、最大応力と平均してかかる応力の差と考えて下さい。

線の上側になると金属が壊れてしまう値を表しています。

途中までは繰り返し回数と応力は反比例の関係にあることが分かると思います。

しかし、ある一定の応力以下では、何回繰り返したとしても金属は破壊しません。

この応力のことを疲れ強さまたは疲労限度と呼びます。

疲れ強さの代表例

疲労限度はどのように決まるのでしょうか。

一般的には、試験を行って実験的に調べた値を用いることが多いです。

特に鉄鋼の回転曲げ試験の場合は、以下の推定値を用いることもあります。

数式

$σ_W≒0.5σ_B$

$σ_W≒1.6HV$

$σ_W$:疲労限度[$Pa$]

$σ_B$:引張強さ[$MPa$]

$HV$:ビッカース硬さ

ただしあくまで推定値なので、実際にサンプルで評価してみる、安全率を大きめに確保するなどして、適切か判断してから使用することが重要です。

時間強度とは?

疲れ強さとよく似た概念で、時間強度という値もあります。

この時間強度は、$10^7$回繰り返したときに壊れない値を示しています。

これは、金属によってはどんなに弱い応力でも、繰り返し続ければいつか壊れてしまうためです。

そのため疲れ強さが存在せず、代わりに時間強度という値を使用しています。

疲れ強さの使いどころ

疲れ強さは、当然繰り返し荷重のかかる機械の設計時に使用されます。

例えば、飛行機では地上にいるときと空を飛んでいる時では、圧力の掛かり方が異なるので疲労を考慮して設計されています。

また、プラスチックなどを生産するときに使用する金型では、金型の耐久ショット数を見積もるときに使用されます。

金型については、以下の記事で説明しています。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は金属の疲労について解説してきました。

まとめると以下のようになります。

まとめ
  • 金属の疲れとは、繰り返し荷重を与えた時に発生する破壊のことを指す
  • 疲労を評価するときは、疲労限度と呼ばれる応力を用いて判断する
  • 金属疲労は、繰り返し荷重がかかる部分の設計に広く用いられている
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