皆さんは物を曲げたり圧縮させたり、変形させてみたことはありますか。
硬いものでも、力を加えれば曲がりますよね。
例えば空き缶やペットボトルを捨てるときに圧縮させることはあるかと思います。
ところで加えた力と変形にはどのような関係があるのでしょうか。
今回は材料力学の基礎である、応力、歪、変形について説明し、変形を抑える方法について考察していきたいと思います。
検討モデル
今回は圧縮をモデルに考えていきます。
重力の影響を考慮せず、真横に梁(はり)へ荷重を加えて圧縮させた場合とします。
このとき梁にかかる応力、歪、変形をそれぞれ考えていきます。
応力とは
応力とは、物体の内部に発生し、物体を変形させようとする力のことを指します。
主に$σ$(シグマ)という文字で表します。
この応力は大きさと向きを表現できます。
単位は[ $N/m^2$ ]となります。つまり1$m^2$あたりにかかる力です。
単位的には圧力の単位[$Pa$]と同じです。
数式で表すと、以下のようになります。
$σ=F/A$
$F$:物体にかかる荷重[$N$]
$A$:荷重が発生する面積[$m^2]
例えば、図の①のように$3m×4m$の大きさの長方形領域に$60N$の荷重が垂直に作用した場合、
$60[N]÷(3[m]×4[m])=5[N/m^2]$
となり、$5[N/m^2]$の応力がかかることになります。
では図の②の場合はどうでしょうか。
同じ$3m×4m$の大きさの長方形領域に$60N$の荷重が斜め30度の方向に作用した場合です。
まず力の向きを分解して考えます。
垂直方向にかかる荷重:$60[N]×sin 30°=30[N]$
水平方向にかかる荷重:$60[N]×cos 30°≒52[N]$
力が発生する面積は同じなので応力は以下のようになります。
垂直方向にかかる応力:$30[N]÷(3[m]×4[m])=2.5[N/m^2]$
水平方向にかかる応力:$52[N]÷(3[m]×4[m])≒4.3[N/m^2]$
ここで垂直方向にかかる応力と垂直方向にかかる応力の2つがありますが、方向によって呼び方が変わります。
垂直方向にかかる応力のことを圧縮応力、水平方向にかかる応力をせん断応力と呼びます。
歪とは
突然ですが「歪」は何と読むでしょうか。
「ゆがみ」でしょうか。それとも「ひずみ」でしょうか。
どちらも感じの読みとしては正解ですが、機械工学的には「ひずみ」が正しい読みになります。(誤読を避けるために、ひらがなで記載することもあります)
この歪は、文字$ε$(イプシロン)で表され、応力を物体の弾性係数で割った値になります。
単位はありません。
今回は圧縮を考えているため、弾性係数は縦弾性係数(ヤング率)$E$[$N/m^2]を使用します。
数式で表すと以下のようになります。
$ε=σ/E$
$σ$:物体にかかる応力[$N/m^2$]
$E$:物体のヤング率[$Pa$]
つまり歪とは、物体全体の長さに対してどのくらいの割合で圧縮されるかを表しているものになります。
変形とは
ここまできて、ようやく変形を表すことができます。
変形量$λ$(ラムダ)[$m$]は、歪と全長の積によって表されます。
数式で表すと以下のようになります。
$λ=ε・L$
$ε$:物体に生じる歪
$L$:物体の全長[$m$]
変形量を制御するには?
ここまで出てきた式を整理すると次のようになります。
$λ=\dfrac{F・L}{A・E}$
$F$:物体にかかる荷重[$N$]
$L$:物体の全長[$m$]
$A$:荷重が発生する面積[$m^2]
$E$:物体のヤング率[$Pa$]
ここからは、この式をもとに変形を抑える方法を考えていきます。
数式から、変形に関するパラメータは4種類であることが分かります。
つまり変形させたくないときは、次の4パターンが考えられます。
- 物体にかかる荷重$F$を小さくする
- 全長$L$を短くする
- 荷重のかかる面積$A$を大きくする
- ヤング率$E$を大きくする
1の場合が一番簡単で、物体に力がかからないようすることで可能になります。
例えば、1本の棒で支えていた部分を2本、3本、4本と支える数を増やしていくことが考えられます。
2や3の形状を調整することも多いです。
例えば、落ちている木の枝を折るとき、細くて長い木の枝は手で簡単に折れても、太くて短い木の枝を折ることは意外と難しかったりする経験があるのではないでしょうか。
金属でも同じように太く短くすれば、変形しにくくすることが可能です。
4を変える場合は材料自体を変更する必要があるため、コストなど他の要素との兼ね合いが必要です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は変形を抑える方法について考察してみました。
まとめると以下のようになります。
- 応力は物体を変形させようとる力
- 歪は物体がどのくらいの割合で圧縮されるかを示した値で、全長との積で変形になる
- 変形を抑えるには、大きく分けて4つの方法があるため、デメリットを考慮して検討する
直方体モデルで考えていきましたが、厳密に知りたい場合は3次元シミュレーションの解析を行うという方法も考えられます。