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材料力学

衝撃荷重の伸びってどのくらい?【材料力学的解説】

皆さんは衝撃荷重による影響はご存じでしょうか。

体重計に勢いよく乗ると、最初の一瞬だけいつもより重い値が表示されますよね。

これが衝撃荷重です。

ゆっくり乗るときに比べて大きい値になります。

今回はこの衝撃荷重について材料力学的に解説していきたいと思います。

そもそも衝撃荷重とは?

衝撃荷重とは、瞬間的に発生する荷重のことを指します。

反対にゆっくりと発生する荷重のことを静荷重と呼びます。

感覚的には衝撃荷重の方が大きいように感じると思いますが、今回は数式を用いて比較します。

ちなみに衝撃荷重は動荷重とも呼ばれ、静荷重と動荷重については以下の記事で解説しています。

引張荷重による応力

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引張衝撃荷重のイメージ
(ただし、紐は伸びは考慮しない)

今回は金属の棒に引張荷重が発生した場合について、伸びを検討します。

まず、$W[N]$の静荷重が発生した場合の応力については、以下の式で表されます。

数式

$σ_静=\dfrac{W}{A}$・・・①

$σ_静$:静荷重で棒に発生する応力[$Pa$]

$W$:棒にかかる荷重[$N$]

$A$:棒の面積[$m^2$]

次に衝撃荷重の場合を考えます。

高さ$h[m]$の位置から物体を落として、$W[N]$の衝撃荷重が発生したときの応力は以下の式で表されます。

数式

$σ_衝=\dfrac{W}{A}(1+\sqrt{1+\dfrac{2EAh}{WL}})$・・・②

$σ_衝$:衝撃荷重で棒に発生する応力[$Pa$]

$E$:棒のヤング率[$Pa$]

$h$:物体を落とす高さ[$m$]

$L$:棒の長さ[$m$]

式①と②を比較すると、②の方が項が多い分、値は大きくなると考えられます。

反対に高さ$h=0$としたとき、式②は式①の2倍と一致します。

そして応力が大きくなると、比例して伸びも大きくなります。

数式

$δ=\dfrac{σL}{E}$・・・③

$δ$:応力による伸び[$m$]

今回はこの伸び$δ$の大きさを比較していきます。

ちなみに応力と伸びの関係は以下の記事で解説しています。

静荷重と衝撃荷重の比較

まず伸びの値を比較してみます。

$W=300N、E=206GPa、A=1m^2、L=2m$とし、落下高さ$h$を$0~2m$の間で変化させたときの結果が以下のグラフになります。

縦軸が伸び$δ$を、横軸が物体の落下高さを表しています。

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棒の伸びと物体の落下高さの関係

グラフを見ての通り、衝撃荷重の方が圧倒的に伸びが大きくなります
具体的には、静荷重は約$3×10^{-6}mm$ほどです。

それでは衝撃荷重が静荷重の何倍になるのかを表したものが以下のグラフになります。

縦軸が伸びの倍率を、横軸が物体の落下高さを表しています。

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静荷重と衝撃荷重の伸びの倍率

このように、衝撃荷重の方が4万倍近く伸びることになります。

伸びを静荷重に近づけるには?

前述の例はもちろん一例であり、実際には棒の形状や材質によって変わってきます。

それでは衝撃荷重による伸びを静荷重による伸びに近づけるにはどうすればいいでしょうか。

式②を元に考えてみましょう。

衝撃荷重の大きさを抑制するパラメータは、荷重$W$と棒の長さ$L$が存在します。

このどちらかを大きくすることで静荷重に近づいていきます

しかし注意点としては、式③を見ると、棒の長さ$L$の値に比例していくため、衝撃荷重による伸び自体は大きくなってしまいます

そのため、根本的に伸びを小さくしたいのであれば、物体が落下する高さ$h$を小さくするか、荷重自体を小さくしてしまうことが必要です。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は衝撃荷重による伸びについて解説してきました。

まとめると以下のようになります。

まとめ
  • 衝撃荷重とは、瞬間的に発生する荷重のことを指す
  • 衝撃荷重は静荷重の倍以上の応力・伸びが発生する
  • 衝撃荷重によって発生する伸びを抑えるには、衝撃自体を少なくする方が良い
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