皆さんは”圧縮性流体”や”非圧縮性流体”という言葉を聞いたことがありますか?
流体の中でも、圧縮性か非圧縮性かで考え方が異なるということもあります。
今回は圧縮性流体と非圧縮性流体について解説していきたいと思います。
圧縮性流体の特徴
圧縮性流体とは、荷重を加えた時に体積が小さくなる流体のことを指します。
例えば、空のペットボトルであれば、蓋を締めていてもある程度は潰すことができますよね。
これはペットボトル内の空気が少しだけ圧縮性流体としての性質を持っているためです。
ちなみに圧縮性流体の気体の体積は、以下の式によって決まります。
$PV=nRT$
$P$:気体の圧力[$Pa$]
$V$:気体の体積[$m^3$]
$n$:気体の物質量[$mol$]
$R$:気体定数[$J/(K・mol)$]
$T$:気体の絶対温度[$K$]
気体の状態方程式とも呼ばれています。
体積と圧力が反比例の関係にあることから、力を加えるほど体積が小さくなるということが分かると思います。
非圧縮性流体の特徴
非圧縮性流体とは、荷重を加えても体積がほとんど変わらない流体のことを指します。
圧縮性流体の逆ですよね。
例えば、ペットボトルの蓋ギリギリまで水を入れて、空気が入らないように蓋を締めたことはありますか?
空のペットボトルの場合と異なり、軽く力を入れてもあまり凹むことはないかと思います。
これは水が非圧縮性に近い性質を持っているためです。
※完全な非圧縮性流体となる物質は存在せず、水でも力を加えれば少しは圧縮されます。
また、非圧縮性流体の場合、体積[$m^3$]が一定ということは、質量[$kg$]は変わらないため、密度[$kg/m^3$]が一定と考えることもできます。
マッハ数との関係
それでは圧縮性流体と非圧縮性流体の境目はあるのでしょうか?
実は同じ流体でもマッハ数によって決まります。
マッハ数とは、ジェット機などの表現に表される音速の何倍かを判断する値です。
例えば、「マッハ2」と言われれば、音速の2倍であることを指しています。
数式で表すと以下のようになります。
$M=\dfrac{u}{a}$
$M$:マッハ数
$u$:流速[$m/s$]
$a$:流体での音速[$m/s$]
このマッハ数が約0.3より小さい場合は非圧縮性流体、約0.3より大きい場合は圧縮性流体となります。
例えば、ほぼ静止している空気であれば、非圧縮性流体になり、音速のように速い空気であれば、圧縮性流体として扱います。
物性と圧縮・非圧縮性流体の関係
ここで、空気・水・油と各流速での圧縮性・非圧縮性流体の関係を以下のグラフに示します。
縦軸が各物性を、横軸が流体の流速を表しています。
例えば、常温にて、空気の音速は約$340m/s$なので、約$100m/s$を超えたあたりから圧縮性流体に変わります。
一方で、油を考えてみると、油での音速は約$1750m/s$なので、約$525m/s$まで非圧縮性と考えることができます。
油のように粘度がある物質で約$525m/s$以上の大きい流速を扱うことはあまり多くないと思いますので、基本的に油は非圧縮性流体として扱われています。
ちなみに粘度については、以下の記事で解説しています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は圧縮性流体と非圧縮性流体の違いについて解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 圧縮性流体は、力を加えて体積が変わる流体
- 非圧縮性流体は、力を加えてもほとんど体積が変わらない流体
- 圧縮性と非圧縮性の境界は、マッハ数によって決まる