水と空気の違いって何でしょうか。
密度?成分?気体か液体か?
どれも正解です。
しかし機械設計者であれば、粘度という観点が必要になります。
今回は粘度、そして動粘度について紹介したいと思います。
粘度とは?
まず流体が動くときを考えます。
例えばプールで泳ぐと抵抗がありますよね。
このように、流体の厚さと流速に応じた圧力が発生します。
数式で表すと以下のようになります。
$τ=μ\dfrac{dv}{dy}$
$τ$:流体から生じるせん断応力[$Pa$]
$μ$:粘度[$Pa・s$]
$\dfrac{dv}{dy}$:流体の厚みに対する流速の変化量[$/s$]
数式を見ると粘度が比例係数になっており、せん断応力が決まります。
(この粘度のことを粘性係数と呼ぶこともあります)
このような圧力が発生する流体のことを粘性流体と呼びます。
例えば、同じ厚さで同じ流速の水と空気を同時に動かした場合、水の方が粘度が大きいためせん断応力が大きくなります。
そのため水の方が空気よりも抵抗が大きいと感じます。
これが粘度です。
動粘度とは?
粘度は流体の動きにくさを表していましたが、動粘度は流体の動きの伝わりやすさを表しています。
動粘度が大きいほど、動きが伝わりやすいということを示します。
例えば、扇風機で風を起こそうとしたとき、水中と空中のどちらが遠くまで風を送れるかということを考えます。
このとき動粘度は空気の方が大きいので、空気の方が、風が遠くまで送れるということになります。
動粘度を数式で表すと、以下のようになります。
$ν=\dfrac{μ}{ρ}$
$ν$:動粘度[$m^2/s$]
$μ$:粘度[$Pa・s$]
$ρ$:流体の密度[$kg/m^3$]
前述の水と空気の場合、空気の方が分子の粘度は小さくなりますが、分母の密度がさらに小さいので、計算して比較すると動粘度が大きくなってしまいます。
温度との関係
粘度も密度も温度に依存して大きさが変わることが知られています。
ここで、各温度でどのように変わるかをグラフにしてみたものが、以下になります。
まず粘度と温度の関係です。
このグラフを見ると、まずどの温度でも水の方が粘度が大きいことが分かります。
20℃で比較してみると、水の方が約50倍大きくなります。
一方で、空気を見てみると、緩やかに粘度が大きくなっていることが分かります。
つまり、温度を上げると、水はサラサラになっていくのに対し、空気は粘り強くなっていきます。
ただし、値としては水に及ばないので、実際に体感で感じることは難しいと思います。
次に動粘度を見ていきましょう。
値の関係上、単位は[$cm/s$]としています。
このグラフを見てみると、動粘度は粘度と逆で、空気の方が常に大きくなっています。
この理由は前述の通り、空気の方が密度が小さいためです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は粘度と動粘度について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 粘度は抵抗の大きさ、動粘度は流体の送りやすさを表している
- 温度が上がるほど、水の粘度は下がり、空気の粘度は上がる
- 水と空気を粘度で比較すると、水の方が大きく、動粘度で比較すると空気の方が大きい