皆さんは半抜きという物をご存じでしょうか。
板金製品の図面を扱ったことがある方であれば、一度は目にしたことがあるかもしれません。
今回は、板金の半抜きについて解説していきたいと思います。
半抜きとは?
半抜きとは、板金の半分程度の厚み分だけ凸状に出っ張らせた構造のことを指します。
ハーフパンチや打ち出し、ダボ加工と呼ぶこともあります。
板金で丸穴を開ける場合、板金に対して円柱形の金属の型を高圧力で押し付けることによって、円形の部分だけくり抜いて丸穴を作っています。
半抜きは、この圧力を調整することで円形の部分をくり抜かず、出っ張りを作ります。
半抜きを利用するメリット
半抜き加工をすることによって得られるメリットはいくつかあります。
位置決めにできる
まず板金で半抜きを使う最も大きいメリットが位置決めになります。
例えば、部品をねじで固定して組み立てるときを考えてみます。
打ち出しがない場合だと、片手で部品を固定しながらもう片方の手でねじを締め込むことになると思います。
大きい部品では、安定させるために治具を作る必要があるかもしれません。
そこで半抜きがあるとどうでしょうか。
治具も必要なく組み立てることが可能になります。
組み立ての方向が分かる
例えば家具を組み立てるときを想像してみましょう。
部品を取り付けるときに、複数の向きに取り付けることができ、組み立てに悩むことがあるのではないでしょうか?
実際に組み立てるときは、組み立ての手順が分かる図を見ながら組み立てると思いますが、図を見なくても組み立てられることが理想的です。
例えば、ねじと穴が4か所あったら取付の向きに悩むと思います。
しかし3か所のねじ穴と1か所の半抜き、3か所の丸穴と1か所だけ明らかに小さい穴があったらどうでしょうか?
組み立ての向きに悩む方は減ると思います
このように半抜きを使うことができれば、部品を見るだけで向きを決めることができます。
ねじ削減に繋がる
これは今までねじで組み立てていた部分を半抜きの位置決めに変更することで、ねじを削減しようとするテクニックです。
ねじを削減できれば、組み立てを行う方の負担も減らすことが可能です。
ただし半抜きの部分はねじ固定よりも弱く、強度が弱くなるため、注意が必要です。
上記のように、半抜きを利用することは組み立て作業の支援になるため、製品のトータルコストで考えたときに、コストダウンに繋がることになります。
半抜きの注意点
これだけ便利な打ち出しですが、注意点もあります。
せん断方向の力に弱い
半分だけ打ち出して加工するという性質上、半抜き加工の部分は強度が弱いです。
特に半抜きに対して、横方向に剥がすような力に対しては弱くなっています。
そのため半抜き部分は、力がかかったときに破損してしまう危険性があります。
強い荷重がかからないような位置での使用を心掛けましょう。
十分な公差計算が必要
当たり前のことではありますが、位置決めをするためには、半抜き加工する部品と穴加工をする部品の2つが必要になります。
組み合わせるためには、半抜きと穴加工の位置がぴったりと合わないといけません。
位置決めを作ったが、ねじとねじ穴が合わない、となっては元も子もないので、公差計算は十分に行っておきましょう。
公差計算については、以下の記事で解説しています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は半抜きについて解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 半抜きとは、板金に凸部分を作る加工
- 半抜きは、部品の組み立ての位置決めなど利用でき、組み立て費用削減が可能
- 半抜きを使用するときは、荷重や公差などの確認が必要