皆さんは浮力という言葉を聞くと何を思い浮かべますか?
プールで浮かぶ浮力でしょうか?風船の浮力でしょうか?
これらももちろん浮力ですが、空気の温度を上げるだけでも浮力が発生します。
よく「暖かい空気は高いところにいく」と言われますが、これも浮力によるものです。
今回は発熱によって発生する浮力について解説したいと思います。
浮力の原理
浮力は以下の式によって計算されます。
$F=ρ・V・g$・・・①
$F$:浮力[$N$]
$ρ$:周囲の気体の気都度[$kg/m^3$]
$V$:温度を上げた気体の体積[$m^3$]
$g$:重力加速度[$m/s$]
浮力と呼ばれる力は、気体中でも液体中でも全て式①によって表されます。
例えばプールであれば、周囲の水の密度が大きいために浮力が発生します。
ここで温度が上がった場合を考えます。
浮力を上げるためには、密度$ρ$か体積$V$か重力加速度$g$を上げるしかありません。
ここで周囲空気の状態を変えることはできませんので、密度$ρ$は変えられません。
重力加速度$g$も地球上であれば変えられません。
そのため、温度が上がって浮力が上がる原因は、気体の体積が増加するためと考えられます。
温度と体積の関係
気体の体積は温度と関係があります。
以下の関係式は気体の状態方程式とも呼ばれており、高校物理や高校化学でも習ったことがあるかもしれません。
ただし、この式は理想気体の場合にのみ成り立つ式となります。
$P・V=n・R・T$
$P$:気体の圧力[$Pa$]
$V$:気体の体積[$m^3$]
$n$:気体の物質量[$mol$]
$R$:気体定数[$J/K・mol$]
$T$:気体の絶対温度[$K$]
気体の圧力$P$と物質量$mol$が一定であると考えると、絶対温度$T$と体積$P$は比例関係にあります。
つまり気体の温度を上げると、比例して体積が増加することになります。
例として、圧力$1.01×10^5Pa$で物質量$1mol$のとき、各温度での体積を求めた結果が以下のグラフになります。
横軸が空気の温度で、縦軸が空気の体積になります。
見やすいよう体積は$L$に換算してあります。
浮力はどのくらい大きくなる?
それでは実際にどのくらい浮力が大きくなるのでしょうか。
周囲温度が0℃の場合、発熱によって空気が80℃になったとき、浮力はどのくらい得られるか、という観点で考えます。
周囲空気の密度が1.293$kg/m^3$、重力加速度9.8$m/s^2$として考えると以下のようになります。
$F=1.293×0.029×9.8=0.368N$
単位が$N$だと分かりにくいので、質量に変換すると、約$37.6g$となります。
これは単三電池と単四電池1本ずつの合計分くらいの質量になります。
この浮力が発生することで浮くことができます。
(ただし、実際には重力の影響があるため、移動速度は緩やかになります)
このように温度を上げることで空気は浮力が得られるということが分かり、冒頭の「暖かい空気は高いところに行く」という現象の説明になります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は温度上昇によって得られる浮力について考えていきました。
まとめると以下のようになります。
- 温度上昇による浮力は、体積が大きくなることで得られる
- 空気の体積は温度に比例して大きくなる
- 温度を上げると浮力が得られるが、重力の影響で速度は緩やかになる