皆さんは「ばね」と聞いて何を思い浮かべますか。
板ばねや渦巻きばねなど色々な種類がありますが、最も有名なのはコイルばねではないでしょうか。
ところでコイルばねのばね定数はどのように決まるのでしょうか。
今回はコイルばねについて解説していきたいと思います。
ばね定数とは?
ここでのばね定数とは、物体を$1m$ 延ばすのに必要な力[$N$]を指します。
つまりばね定数が大きいということは、伸びにくいということを指しています。
例えば、輪ゴムなどのゴム製品は手で引き延ばすことは容易だと思います。
しかし同じように鉄を手で延ばすことは難しいと思います。
これがばね定数の違いです。
ゴムはばね定数が小さく、鉄はばね定数が大きいということになります。
単位は[$N/m$]です。
コイルばねが伸びる原理
コイルばねはなぜ伸びるのでしょうか。
それはコイルばねの形状に理由があります。
コイルばねは螺旋形状をしていますが、荷重を加えるとばねの線が回転します。
ここで回転した分だけ、コイルばねの全長が伸びることになります。
このように、コイルばねは素材自体が伸びているのではなく、線が回転することによって全長が伸びています。
ばね定数の数式
ばね定数は数式が決まっており、以下の式で表されます。
$k=\dfrac{Gd^4}{8nD^3}$
$k$:コイルばねのばね定数[$N/m$]
$G$:ばねの横弾性係数[$Pa$]
$d$:ばねの線径[$m$]
$n$:コイルの巻き数
$D$:コイルの平均径[$m$]
このように材質と形状によってばね定数を決定することができます。
ばね定数を大きくするには?
ここでばね定数を大きくするにはどうすればいいかを考えていきます。
例えば、ばね定数を2倍にするにはどんな方法がいいでしょうか。
数式から考えると4パターン存在します。
横弾性係数を大きくする
ばね自体の材料を変更して、横弾性係数の値を大きくするという方法が考えられます。
コイルばねに使われる材料は、硬鋼線、ステンレス鋼線、黄銅線などの種類があります。
それぞれ横弾性係数は以下のようになります。
例えば、現状で黄銅線を使っていれば、硬鋼線に変更することで、形状はそのままでばね定数を大きくすることができます。
ばねの線径を大きくする
数式からばね定数を考えると、ばねの線径は4乗で計算されています。
つまり、線径を1.2倍にするだけでばね定数を2倍以上に大きくすることができます。
ばねの線は0.1mm程の小さいものから10mmを超えるものまであるので、必要なばね定数に応じて径を選択することも可能です。
コイルの巻き数を小さくする
コイルの巻き数を小さくすることでもばね定数を大きくできます。
巻き数を半分にすれば、ばね定数を2倍にすることができますが、その分コイルばね自体の大きさが小さくなることに繋がりますので、注意が必要です。
コイルの平均径を小さくする
コイルの平均径も小さくすることでばね定数を大きくできます。
数式から、コイルの平均径は3乗で計算されています。
つまり、コイルの平均径を0.79倍にできれば、ばね定数を2倍にできます。
計算上は可能ですが、実際に平均径を小さくしすぎると、組み立てにくくなるなどの問題も生じます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はコイルばねのばね定数について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- コイルばねは線が回転することで伸びる
- ばね定数を変えるには、横弾性係数、線径、巻き数、平均径を変えることで調整可能
- ばね定数を変えると形状も変わるので、注意が必要