皆さんは浴槽にお湯を張っていますか。
寒い日はゆっくりお風呂に浸かってリラックスしたいですよね。
ただ、浴槽のお湯って、栓を抜いてもなかなか抜けないと思います。
今回は浴槽のお湯を早く抜く方法について解説していきたいと思います。
前提条件
浴槽は直方体で、浴槽の一か所からお湯を抜く構造とします。
また、簡単のため、お湯が抜けるときの排水口形状による流体の圧力損失も無視して考えます。
お湯が抜ける速度と時間の関係
計算式
浴槽からお湯が抜ける速度を式で表すと、以下のようになります。
$v=\sqrt{2gh}$・・・①
$v$:お湯が抜ける流速[$m/s$]
$g$:重力加速度[$m/s^2$]
$h$:浴槽に残っているお湯の高さ[$m$]
ここで流速が求まるので、排水口の面積を用いて浴槽の残りの体積が求まります。
$V’=V-A・v・Δt$・・・②
$V’$:現在の浴槽に残っているお湯の体積[$m^3$]
$V$:現在の浴槽に残っているお湯の体積[m^3$]
$A$:排水口の面積[$m^2$]
$Δt$:現在からの経過時間[$s$]
さらに、浴槽の縦横幅から$Δt$秒後のお湯の高さが分かります。
$h’=V’/(a・b)$・・・③
$h’$:現在から$Δt$秒後に浴槽に残っているお湯の高さ[$m$]
$a$:浴槽の縦幅[$m$]
$b$:浴槽の横幅[$m$]
ここで$Δt$秒後にはお湯の高さが変わっているので、排水口から抜けるお湯の流速が下がります。
そのため、$h’$を用いて再度①を計算し、流速を求め、②、③から次の高さを求め、、、
という工程を繰り返します。
高さと時間の関係
それでは、具体的にどうなるかを計算してみます。
最初に浴槽に入っているお湯の高さを0.4m、縦幅1.2m、横幅1.6m、排水口形状は直径0.04mの円とします。
$Δt=1$として計算した結果を以下に示します。
結果は約430秒(=約7分)くらいでお湯が抜けきる計算になります。
このように、排水する流速はお湯の高さに依存するので、実は一定の流速で抜けてくれません。
お湯の残りが少なくなった時に、なかなか排水し終わらないのはこのためです。
早くお湯を抜きたいときはどうする?
流速に依存するのは重力加速度とお湯の高さになります。
浴槽と排水口の形状が変えられない場合、お湯の高さは変えられません。
重力加速度も定数なので、一見すると流速は変えられないように思います。
ここでお湯の上に浮き輪を浮かべて、お湯全体に圧力をかけた場合を考えてみます。
すると①の数式が以下のように変わります。
$v=\sqrt{2gh+P/ρ}$
$P$:お湯にかける圧力[$Pa$]
$ρ$:お湯の密度[$kg/m^3$]
この場合、流速を上げる方法として、お湯にかける圧力を上げる、密度を下げるという2種類の方法が考えられます。
しかしお湯の密度は、40度で密度$992kg/m^3$、温度を変えても密度はほとんど変わりません。
そこで、圧力を上げるという方法が最も有効と考えられます。
どのくらい早くなる?
ここで、お湯に圧力を10kg,100kg分かけたときのお湯の高さと時間の関係を示します。
グラフの結果の通り、圧力をかければやや短くなりますが、ほぼ変化はありません。
圧力なしの場合は約430秒、圧力10kg分の場合は約418秒、圧力100kg分の場合は約388秒となります。
時間としては42秒ほどの節約にはなりますが、100kg分の圧力を加えるための準備時間を考えると、結果的に時間がかかってしまうかもしれません。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は浴槽のお湯を早く抜く方法について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- お湯を抜くときの流速は、お湯の高さに依存するので、一定の速さにならない
- 早くお湯を抜きたい場合は、お湯に圧力をかけると良い
- ただし100kg分程度の圧力では、大きな時間変化は得られない