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流体力学

風船が浮く理由【流体力学的解説】

皆さんは小さいころに風船で遊んだことはありますか。

質量のある物体が、空気中をプカプカ浮いているのは不思議ですよね。

今回は、風船のように物体が浮く理由を、流体力学の一種である空気力学の考えを用いて解説していきたいと思います。

浮く理由は?

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物体が浮く理由は、浮力があるからではありません。

浮力が重力より大きいから浮いています

そもそも浮力という力は、今も我々に常にかかっています。

空気という流体の中に我々が存在しているためです。

しかし重力の方が強すぎるため、空気から受ける浮力を実感することはないでしょう。

逆に水の中にいるときは、浮力の方が大きいので、力の大きさを感じることができると思います。

数式で考えると?

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風船の概算用モデル

ここで数式を使って具体的に考えていきましょう。

簡単のため、風船は内径$r$、厚さ$Δr$の球と仮定します。

このとき、風船が浮く条件は以下の式で表されます。

数式

$ρ_外・V_外・g > ρ_中・V_中・g+ρ_材・4πr^2Δr・g$

ただし、

$V_外=4/3・π・(r+Δr)^3$

$V_中=4/3・π・r^3$

この式の左辺は浮力で浮き上がる力を示しています。

一方で右辺は風船の内部空気にかかる重力と、風船の材質にかかる重力になります。

風船に普通の空気を入れても浮かない理由

ここで風船に普通の空気を入れても浮かない理由を考えてみます。

風船内に空気を入れるということは、風船の中と外の気体の密度が同じになります。

つまり、ほぼ$ρ_外=ρ_中$の状態になるので、もし風船が浮く場合は以下の式を満たしていることになります。

数s気

$ρ_外 > ρ_材$

しかし実際には密度が空気よりも密度が軽い固体はそう簡単に手に入らないと思います。

もしあったら、自然に浮き上がってしまうからです。

少なくとも一般のゴム材料では実現できないですね。

これが普通の空気でも風船が浮かない理由です。

どんな気体なら浮く?

ここで、風船の中にどんな気体を入れたら浮くかを考えてみます。

式を変換すると以下のようになります。

数式

$ρ_中 < (ρ_外・V_外-ρ_材・4πr^2Δr)/V_中$

風船は内径$r=0.11m$、厚さ$Δr=0.0005m$、空気の密度$ρ_外=1.293kg/m^3$と仮定して値を代入すると、以下のようになります。

数式

$ρ_中 < 1.21$

つまり密度が$1.21kg/m^3$未満という条件を満たす気体であれば、風船を浮かせることができます

代表的なものではヘリウムがよく使われていますが、これは密度が$0.1785kg/m^3$なので、条件を満たしています。

他にも軽い気体だと、水素(密度$0.09kg/m^3$)やアンモニア(密度$0.771kg/m^3$])などがありますが、安全性の観点から使われていません。

風船で空を飛べる?

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昔話や童話でよくありがちな、風船で空を飛べるかを考えてみましょう。

簡単のため、人にかかる浮力は無視して考えると、重力の合計よりも風船の浮力の方が大きいと浮くことができます

数式で表すと以下のようになります。

数式

$ρ_外・V_外・g・N > ρ_中・V_中・g・N+ρ_材・4πr^2Δr・g・N+M・g$

$N$:風船の個数

$M$:人の質量[$kg$]

人の質量を$60kg$、気体はヘリウム(密度$0.1785kg/m^3$)として考えていきます。

風船何個で飛べる?

このとき、人間にかかる重力は$588N$になります。

一方で風船1個の浮力は$0.0565N$ほどです。

つまり風船で飛ぶには約1万404個の風船が必要です

1個の風船で飛べる?

上記の計算は風船が直径22cmと小さいために膨大な数になったと思います。

そこで風船がもっと大きければ浮力を大きくすることができるので、1個の風船で飛べる大きさを考えてみます。

計算したところ、風船の半径が$2.4m$あれば、約$630N$の浮力が発生するので、浮くことができます

ここまでくると、風船というより気球に近いかもしれません。

(ただし気球と風船ではが浮く原理が異なります)

風船の半径と個数の関係

人間が浮くことができる風船の半径と個数の関係をグラフにしてみました。

縦軸が風船の個数、横軸が風船の半径を表しています。

縦軸は対数グラフにしています。

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風船の個数と半径の関係

グラフを見ると、半径が0~0.5mの間で急激に個数が減っていることが分かります。

つまり、風船で浮きたいと考えるなら、個数よりも半径を大きくしていった方が効果が大きいです。

ただし、今回の計算の前提として、風船の強度は無視して考えています。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は風船の浮力について解説していきました。

まとめると以下のようになります。

まとめ
  • 浮力は、風船の中に入る気体の密度が小さいと得られる
  • 半径11cm相当の風船で人が浮くには、1万404個以上の風船が必要
  • 風船1個で人が浮くには2.4m以上の大きさが必要
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