機械を設計していると、材料の破壊に気を付ける場面があると思います。
破壊には大きく分けて脆性破壊と延性破壊の2種類ありますが、どのように違うのでしょうか?
今回は脆性破壊と延性破壊の違いについて解説していきたいと思います。
脆性破壊
脆性破壊は、比較的小さな変形の後に破壊する現象のことを指します。
温度が低い場合や急速な荷重が生じた場合に発生しやすく、延性破壊に比べると、あまり伸びずに破壊することが特徴です。
応力ひずみ線図は以下のようになります。

脆性破壊しやすい材料は、セラミック材料などが挙げられます。
例えば、ガラスのコップを割ったときを考えてみましょう。
落下したときの衝撃を受けると、ほぼ変形せずに割れることになります。
これが脆性破壊の代表例となります。
また、金属材料だったとしても、温度が下がると脆性破壊することもあります。
延性破壊
延性破壊とは、材料が弱まりながら大きな変形を超えて破壊する現象を指します。
金属などの延性のある材料に見られる傾向があり、破壊に至るまでに大きな変形が発生するため、不具合を予見しやすいことが特徴です。
応力ひずみ線図は以下のようになります。

例えば、粘土を引きちぎるときを考えてみましょう。
粘土を引っ張ると少しずつ伸びていくことが分かると思います。
この状態が延性を表した状態であり、そのまま伸びてちぎれた状態を延性破壊した状態と考える事ができます。
材料の例
脆性材料の例

脆性材料には以下のような例が挙げられます。
セラミック材料
ガラスやファインセラミックスなどが代表例となります。
高い高度と耐熱性を持つことが特徴です。
高分子材料
ポリ塩化ビニル材やポリスチレンに代表される高分子材料は脆性を示します。
また、炭素繊維強化プラスチックも脆性材料ですが、軽量で高強度という特徴を持っています。
コンクリート材料
道路に使用されているコンクリート材料も脆性材料の一つです。
圧縮強度が高いですが、引張や衝撃に弱いという特徴もあります。
延性材料の例

延性材料には以下の例があります。
金属材料
鉄やアルミ、銅に代表される金属材料は延性を示します。
これらの材料に亜鉛や錫を加えた合金も、同様に延性を示します。
高分子材料
高い延性を示す高分子材料も存在します。
例えばポリエチレンやポリカーボネートなどは延性を示します。
ゴム材料
天然ゴムや合成ゴムは延性を示します。
伸び縮みする性質を示すため、シール材としても利用されます。
機械工学での事例
機械工学の世界では、脆性破壊や延性破壊が起こったことによるトラブルも存在します。
脆性破壊の例として、タイタニック号沈没事故が挙げられます。
これは船の外板に使用されている鋼鉄が低温下で脆性を示し、氷山に衝突した衝撃によって脆性破壊が生じました。
延性破壊の例としては、石油プラント配管の破断事故などが挙げられます。
高温高圧の条件で使用される配管が、長期間の使用によって延性変形を進行させた結果、破断に至ります。
このような事故が生じないよう適切な材料選定と荷重管理が重要となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は脆性破壊と延性破壊について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 脆性破壊は比較的小さな変形の後に破壊する現象のことを指す
- 延性破壊は材料が弱まりながら大きな変形を超えて破壊する現象を指す
- 脆性破壊や延性破壊は材料によって発生しやすさが異なる