皆さんは図面を見た時に「抜きダレ面」という記載を見たことがありますでしょうか。
古い図面にはよく書いてあると思いますが、どういう意味でしょうか。
今回は抜きダレ面について解説したいと思います。
抜きダレとは?
板金をプレスで穴あけしたときに、プレスを入れる側の方向になります。
例えば、板金に丸穴をあけるときは、円柱の金属の棒を高圧で入れて穴を開けます。
パンチで紙に丸穴をあけるときに似ていますね。
名称もメーカーなどの指定によって微妙に変わっていることもあり、「抜き面」や「ダレ面」と呼ぶこともあります。
なぜ抜きダレと呼ぶのか
図面では理想的な直角形状を記載していると思います。
しかし実際に作るとなると、完全な直角はありえないですよね。
実際の穴の断面を拡大すると、図のようになっています。
これは穴を開けるときに、材料の一部が引っ張られてしまうためです。
そのため、片側はRが付いたようなダレた面になっています。
金型で穴を抜いて、ダレた面になっているため、抜きダレ面です。
一方でダレ面の反対側は尖ってしまいます。
これをバリやカエリと呼ぶこともあります。
設計者はどのようなときに意識するか
設計者としては、抜きダレ面の反対側のバリを意識しておくことが重要です。
安全性に対する考慮
例えば、ボタンのように人が手で触る部分にバリが残っていたらどうでしょうか。
簡単に使用者がケガしてしまいますよね。
このように抜きダレ面側は人の手が触れない部分にすることが必要です。
部品干渉に対する考慮
例えば、穴の近くに被覆の薄いケーブルがあったらどうでしょうか。
バリがある面と接触することで、被覆にバリが刺さってしまいます。
組み立てた直後は問題なくても、振動させたり、衝撃を加えたりすることで、さらに被覆が破損し、最悪の場合ショートして事故になってしまうかもしれません。
このような事故を避けるため、ケーブルなどデリケートな部品が近くにある場合は抜きダレ面にすることが多いです。
最近の図面では減っている?
最近は「抜きダレ面」と書かないことがあります。
これは書き忘れではなく、理由があります。
技術の発達により、加工機も年々新しくなってきています。
穴を開けるときに金型を使っている加工機もあれば、レーザーカットによって形を作る加工機を使う場合もあります。
この場合は、せん断面が発生しないため、どちらの面も抜きダレ面になることはありません。
そのため、図面に記載しなくてもバリのない製品が出来上がります。
ただし、加工方法が不明な場合は、しっかりとどちらがダレ面かを記載しておきましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は抜きダレ面について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 抜きダレ面は穴あけ時にプレスを入れる方向
- 人の手が触れる部分は、安全のため抜きダレ面側にする
- レーザーカットで加工する場合は記載が不要な可能性もある