皆さんはねじで組み立てることはよくありますか。
二つの部品を組み合わせて、接合するのにねじは便利ですよね。
ただし、そんなねじにも「焼き付き」と呼ばれる事故があります。
今回はねじの焼き付きについて、解説していきたいと思います。
ねじの焼き付きとは?
通常はねじを時計回りに回すと入っていき、完全に入りきると止まりますよね。
しかし完全に入りきる前に、止まってしまうことがあります。
このとき、おねじとめねじが溶着してしまっているので、反時計回り回しても取り出すことができません。
このようにねじのおねじとめねじが固定され、動かなくなってしまうことを焼き付きと呼びます。
カジリと呼ばれることもあります。
無理にねじを回そうとすると、破損する可能性もあるため、危険な現象です。
焼き付く原因
焼き付く原因は熱伝導率の低さと熱膨張係数の高さにあります。
ねじを締め込むときには摩擦が発生します。
そして摩擦からは熱が生まれます。
通常の鉄ねじであれば、熱伝導率が高いので、摩擦で発生した熱はすぐに放出されてしまいます。
しかし熱伝導率が低いと、摩擦熱が放出されません。
そして熱膨張係数が高いと摩擦熱によってねじが膨張してしまいます。
この膨張によっておねじとめねじの間の隙間が埋まって動かなくなってしまいます。
焼き付きの対策は?
焼き付き対策には色々な物がありますが、代表的な物を3点挙げます。
ねじを締め込む速度を下げる
ねじを締め込むときに発生する熱は以下の式で表されます。
$Q=F・v=μN・rω^2$・・・①
$Q$:発熱量[$W$]
$F$:締め込み時の荷重[$N$]
$v$:締め込み時の速度[$m/s$]
$μ$:動摩擦係数
$N$:おねじとめねじの間に発生する垂直抗力[$N$]
$r$:ねじの半径[$m$]
$ω$:ねじ締め込み時の角速度[$/s$]
この式の左辺の値が大きいほど発生する熱が大きくなります。
つまり焼き付く可能性が高くなります。
数式から、値を小さくするためには、$μ、N、r、ω$のどれかを小さくすればいいことが分かります。
$N、r$はねじの形状によってある程度決まってしまいます。
しかし角速度$ω$はどうでしょうか。
締め込むときの角速度であれば、小さくすることは可能だと思います。
しかも2乗で効いてくるので、効果は大きくなります。
潤滑剤を塗布する
式①から考えると、ねじの摩擦係数を下げても値を小さくすることが可能です。
ところで摩擦係数を変更することは可能なのでしょうか。
世の中には、ねじ用の潤滑剤も市販されています。
このような潤滑剤を塗布することで、摩擦熱の発生を抑えることができます。
材料を変更する
ねじの焼き付きが発生しそうなとき、ねじの材質自体を変えるという方法もあります。
このとき、熱伝導率や線膨張係数が大きい値を選ぶことが重要です。
各材料の熱伝導率と線膨張係数の関係を以下のグラフに示しました。
このグラフの右上にある材料ほど熱を逃がしやすく、膨張しにくいので、焼き付きが発生しにくいと考えられます。
ただし、ねじの材料変更には使用環境によっては、錆びや電蝕などの悪影響を及ぼしてしまうので、注意が必要です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はねじの焼き付きについて解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- ねじの組み立て時には、焼き付いて動かなくなる危険性がある
- 焼き付きの原因は、締め付け時の摩擦熱が逃げきらないことにある
- 対策としては、摩擦による発熱の減少や材質の変更が考えられる