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伝熱工学

強制空冷の熱伝達率を大きくするには?【伝熱工学的解説】

皆さんは熱い飲み物を飲むとき、息を吹きかけて冷やそうとすると思います。

これは感覚的に冷えると分かっているからできることですよね。

ところで本当に冷えるのでしょうか?

今回は強制空冷時の熱の移動について解説していきたいと思います。

そもそも強制空冷とは?

強制空冷とは、風が発生して冷やそうとする場合の伝熱モデルのことを指します。

反意語として自然空冷という言葉があります。

イメージとしては、夏場に扇風機で涼んでいる状態が強制空冷状態です。

検討モデル

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イメージ図

モデルとしては、長さLの平面の板を仮定します。

このときに平面に対して平行に風が流れている場合で、流れは層流として考えていきます。

下から上に向かって熱を放出しており、重力の影響は無視します。

また、平面の温度は均一になっているものとします。

温度は平面から空気へ熱伝達される影響のみ考慮します。

ちなみに熱伝導と熱伝達の違いは、以下の記事で解説しています。

数式による検討

ここで数式によって検討を行います。

まず前提として、対流熱伝達による平板から空気への放熱は以下の式で表されるものとします。

数式

$T_{平板}-T_{空気}=\dfrac{Q}{A・h}$

$T$:温度[$K$]

$Q$:発熱量[$W$]

$A$:平板の面積[$m^2$]

$h$:平板と空気の熱伝達率[$W/m^2K$]

このとき、左辺は空気と発熱体の温度差を表しています。

左辺の温度差が0に近いほど、空気と温度差が小さい、つまり冷ますことができていることを指します。

では、どうすれば左辺の値を小さくすることができるのでしょうか?

それは右辺の値を小さくすることで、可能になります。

まず発熱量$Q$は一定として考えます。

平板の面積$A$も今回は一定とします。

(もちろん、面積は大きいほど冷えやすくなります。)

すると残りは熱伝達率$h$を大きくするという方法が考えられます。

熱伝達率は場所によって変わりますが、平均熱伝達率として、強制空冷の場合、以下の式で表されます。

数式

$h=0.664・k・(\dfrac{1}{ν})^\dfrac{1}{6}・(\dfrac{1}{α})^\dfrac{1}{3}・(\dfrac{u}{L})^\dfrac{1}{2}$

$h$:平均熱伝達[$W/m^2K$]

$k$:空気の熱伝導率[$W/mK$]

$ν$:空気の動粘度[$m^2/s$]

$α$:空気の温度拡散率[$m^2/s$]

$L$:平板の長さ[$m$]

この数式は、平均ヌッセルト数、レイノルズ数、プラント数の関係式から導出しています。

この式より、熱伝達率は流速の1/2乗に比例していることが分かります。

そのため、熱い物には風を与えることで、熱伝達率が大きくなり、温度差が小さくなるということが分かりました

風速以外で冷ます方法は?

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熱伝達率の数式についてもう少し考えてみましょう。

風速以外で対応できるパラメータは、空気の熱伝導率$k$と動粘度$ν$と温度拡散率$α$の3つあります。

空気の熱伝導率を大きくする

一つ目に空気の熱伝導率を大きくするという方法が考えられます。

しかし空気の熱伝導率は、100℃の場合で$0.0316W/mK$ありますが、温度が20℃の場合で、$0.0257W/m^2K$と、温度が下がるほど熱伝導率も下がってしまいます

つまり熱伝導率は温度に依存して決まるため、熱伝導率を大きくして変化させることはできません

動粘度・温度拡散率を小さくする

数式を見ると、熱伝達率は動粘度の1/3乗に反比例し、温度拡散率の1/6乗に反比例していることが分かります。

つまり動粘度や温度拡散率を小さくすることで、熱伝達率の値も大きくなります。

しかし熱伝導率と同様、動粘度や温度拡散率についても温度によって決まります

そのため、動粘度や温度拡散率を小さくするといった方法で、熱伝達率を変化させることもできません

ちなみに動粘度については、以下の記事で解説しています。

このように、熱伝達率は流速$u$と平板の長さ$L$以外のパラメータが温度依存で決まるため、他の方法で大きくすることは難しいということになります。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は強制空冷の熱伝達率について解説してきました。

まとめると以下のようになります。

まとめ
  • 強制空冷で冷えるのは、熱伝達率を大きくしているため
  • 熱伝達率は、風速の1/2乗に比例して大きくなる
  • 熱伝達率のパラメータは空気の温度によって決まるため、大きくすることは難しい
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