皆さんは「ザグリ」という言葉を聞いたことはありますか?
機械部品の図面を見たことある方なら、記載を見たことがあるかもしれません。
今回は「ザグリ」について解説したいと思います。
ザグリとはどんな形状?
ザグリとは穴の周囲を一段下げた形状のことを指しています。
座繰りと呼ばれることもあります。
通常では、ねじで部品を取り付けるとき、ねじ穴を持つ部品と、丸穴を持つ部品の二つを用意します。
このときの丸穴の部分を「キリ」と呼びます。
それに対して、丸穴よりも大きめの段の部分を「ザグリ」と呼びます。
ザグリの加工方法
ザグリはキリの部分を含めて、2回以上に分けて加工していきます。
まずキリの部分の貫通穴をドリルで作成します。
次にザグリの部分を指定の深さまでドリルで掘り進めます。
キリの径が大きい場合は、まず小さいドリルで穴を開け、徐々に大きいドリルを大きくしていきます。
ちなみに金属に関する、代表的な加工法の種類は以下の記事で解説しています。
なぜ小さい穴から開けていくのか?
ドリルにかかる負荷は、以下の関係式が知られています。
$R∝b・t$
$R$:切削時の抵抗[$N$]
$b$:切削幅[$mm$]
$t$:切削厚さ[$mm$]
ドリルで切削するときには、切削部の形状に比例する力が発生します。
つまり、切り込む大きさが大きいほど切削時にドリルが受ける力も大きくなり、刃が壊れやすくなってしまいます。
そのため穴を開けるときは、小さい穴から順に大きくしていくことが基本となります。
ザグリ加工を用いるメリット
ボルト頭の干渉防止
ボルトの頭が穴の内側に入り込むことになるので、他の部品と干渉する恐れが無くなります。
通常であれば、ねじやボルトの頭、ナットは部品表面から飛び出た位置に搭載されています。
飛び出ていると、人や他の部品と干渉したり、コードが引っかかるなど、不具合が発生する場合があります。
このような不具合の防止策として、ザグリを適用して、外側に部品が飛び出ないような設計としています。
ねじの締付力強化
部品の表面がザラザラしていたり、斜めに歪んでいた場合を想像してみて下さい。
もしそんな部品をねじで取り付けた場合、うまく固定できるでしょうか?
恐らく固定できず、無理に取り付けられたとしても、最悪の場合ねじが外れてしまいます。
そんなときにザグリがあったらどうでしょうか?
新しく平らの面を作り出すことができれば、ねじによる固定も可能になると思います。
このようにねじの緩み対策のためにザグリを用いることもあります。
ザグリを用いる注意点
ザグリを用いるときに注意しなければいけない点として、工具が入るかという点が挙げられます。
例えば、ザグリの部分にボルトを入れた場合、どのように取り付けると思いますか?
まずモンキーレンチのような工具は間違いなく入りません。
横から工具を入れるスペースがないためです。
そのため、ソケットレンチなどのザグリ深さ分入る工具を選定する必要があります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はザグリについて紹介してきました。
まとめると以下のようになります。
- ザグリとは、穴の周囲が段になっている形状のことを指す
- ボルト頭の干渉や締結の改善にザグリを用いる
- ザグリを用いる場合は、取付工具の選定も考慮に入れる