皆さんはテーパという形状をご存じでしょうか。
成形品を設計する上では、テーパを付けることが必須となっていますが、なぜテーパを付けているのでしょう?
今回はテーパについて役割を解説していきたいと思います。
テーパとは?
テーパとは、斜めに角度を付けた形状のことを指しています。
場合によっては勾配と呼ばれることもありますが、厳密にはテーパと勾配は異なります。
以下のような形状を見てみましょう。
斜めになっている場所を勾配と呼びます。
このとき左右の斜めになっている両方の角度の合計がテーパと呼ばれています。
つまり、以下のような数式が成り立ちます。
$テーパ角=勾配角×2$
ただし、人によってはテーパと勾配を混同して使用していることもあるため、どの角度を指しているのかを確認しましょう。
テーパを付ける理由は?
テーパを付ける理由は、金型から製品を取り出しやすくするためです。
金型については、以下の記事で解説しています。
成形品は、金型という金属の型に、高温でドロドロに溶かした材料を流し込んで作ります。
このドロドロの材料を入れ終わった後は冷やして固めますが、固まった製品を金型から取り出す必要があります。
このとき以下のAとBではどちらが取り出しやすいでしょうか?
一見、どちらでも取り出せるように思いますが、Aの場合では金型と製品の間に摩擦が発生するため、取り出しに時間がかかってしまいます。
そのため、Bの形状のようにテーパを付けておくことで、製品を取り出しやすくなります。
取り出しの時間が短くなれば、大量生産時の製造時間を短くすることができ、納期短縮に繋がっていきます。
テーパの向きは?
それでは、テーパの向きはどちら側に付けるといいのでしょうか?
テーパの向きは、金型を抜く方向に対して付けます。
例えば、以下のコの字のような形状はどうでしょうか?
このときは、外側に広がるようにテーパ角を付けます。
そのため、ペットボトルのキャップには緩やかに角度が付いていると思います。
では、以下のようなE型の形状はどうでしょうか?
先ほどの形状に似ていますが、今回は中にも形状があります。
そのため、内部も金型を抜けるようにテーパを付けておく必要があります。
このとき、金型が抜ける方向なので、中央部分は逆向きのテーパ角を付けています。
このように、設計時点で金型の抜ける方向をイメージしておき、テーパを付けておくことが重要です。
テーパの角度は何度くらい?
テーパの角度には、何度という決まりはありません。
一般的には1度~3度くらいと言われています。
材料や金型、大きさによって、金型から取り出しやすさが異なるためです。
少しでも角度が付いていれば抜けやすくなりますが、あまり角度を付けすぎると、他の形状が大きくなる(小さくなる)ため、不具合も生じやすくなります。
機能や成型条件を考慮して、テーパ角を設定しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は成形品のテーパについて解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- テーパとは成形品に付ける角度のこと
- テーパは金型から取り出しやすくするために付与する
- 設計時点で金型の抜き方向と角度を考慮しておくことが必要