皆さんは面取りという言葉を聞いたことはありますか?
機械工学の世界では当たり前と言われていることもあります。
今回は面取りと行う理由について解説していきたいと思います。
面取りとは何か
面取りとは、加工物の角を加工して落とすことです。
私たちの身の回りの机やコップ、スマホなどの淵を見てみて下さい。
角は完全な直角ではなく、少し丸みを帯びているような形状になっていませんか。
これが面取りです。
面取りを行う理由
面取りを行う理由は様々なことが言われていますが、ここでは代表的な物3つを紹介したいと思います。
安全性の向上
この理由が最も一般的な理由になるかと思います。
角が直角のままでは、部品を手で触ったときに切れてしまいます。
手で触って切れる製品があったら危険ですよね。
これは同じ力で触ったときでも、接触面積が小さくなり、手にかかる圧力がその分大きくなるためです。
圧力を数式で表すと、以下のようになります。
$P=\dfrac{F}{A}$
$P$:手にかかる圧力[$Pa$]
$F$:部品に触れるときの力[$N$]
$A$:触れる面積[$m^2$]
面取りをしていない角の状態では、接触面積がほぼ0になるため、力が小さかったとしても、圧力が無限に近づいていきます。
皆さんも細いペンや針を誤って踏みつけた時、痛い思いをしたことがあるのではないでしょうか。
これが接触面積が0に近い状態です。
一方で面取りを行っておけば、接触面積が大きくなるので、圧力が小さくなります。
塗装品質の確保
面取りを行うことで、角部分の塗装品質を確保することができます。
そもそも塗装とは、金属などの材料に液体や粉末の塗料を付着させて色を付けていく工程になりますが、これは付着させる面があるからこそ可能なことです。
角には面がありませんので、塗料を付着させることができません。
塗膜を厚く盛って付着させることもできますが、塗装割れの原因になってしまうこともあります。
しかし面取りをしていてはどうでしょうか。
角部分にも面があるので、塗料を付着させることができます。
このように塗装に対しても、面取りを行うことで改善が見込めます。
組み立て性の向上
部品が組み合わさる場合に対しては、組み立て性の向上にも繋がります。
穴に対して軸を入れるような構造の場合を考えてみます。
穴側が直角の場合と、面取りをしている場合を図で比較してみます。
直角の場合は軸が入りにくそうと思うのではないでしょうか。
実際にこのような軸と穴の組み合わせでは、片側0.1mm以下の隙間しかないことも多いです。
そんな精度で一日に何個も組み立てを行うのは、とても大変だと思います。
しかし面取りがあるとどうでしょうか。
例えば、面取りの距離が1mmしかなかったとしても、斜めになっていることで、簡単に入れることができそうですよね。
これが組み立て性向上の理由になります。
面取りの種類
面取りには大きく分けてC面取りとR面取りと糸面取りの3つがあります。
C面取り
角の部分を45度に切り落とす面取りのことを指します。
例えば2mm分を切り落としたいときは、「C2」のように指示します。
R面取り
角の部分を円状に加工する面取りのことを指します。
例えば、円の半径を3mmにしたい場合は、「R3」のように指示します。
糸面取り
角の部分を完全な直角状態から少しだけ削った状態のことを指します。
目安として、R0.2くらいのことが多いです。
詳細は加工を行うメーカーに問い合わせて整合しましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は面取りについて紹介してきました。
大きく分けて以下の3つの利点があります。
- 安全性の向上
- 塗装品質の確保
- 組み立て性の向上
私たちの身の回りにも面取りをしている箇所は溢れています。
たった1mmや2mmの小さなことでも、役に立つことがあるということが分かったと思います。