皆さんは”熱”という言葉を聞いたことがあると思います。
”抵抗”という言葉も聞いたことがあると思います。
では、”熱抵抗”という言葉はどうでしょうか。
熱関係の設計者でなければ、あまり聞き馴染みのない言葉かもしれません。
今回は、熱抵抗について解説していきたいと思います。
熱抵抗の意味
熱抵抗とは、熱の通りにくさを表している値を意味しています。
値が大きいほど熱が通りにくいことになります。
例えば、鍋で食材を温める場合を考えます。
同じ大きさの鉄製の鍋と木製の鍋があったとして、どちらが食材を温めやすいと思いますか?
当然鉄製の鍋ですよね。
これは鉄の方が熱抵抗が低いため、温めやすいと考えることができます。
言い換えると$1W$の熱を加えた時に、温度を何$℃$上げることができるかを示している値と考えられます。
そのため単位は[$℃/W$]もしくは[$K/W$]となります。
熱抵抗の定義式
熱抵抗の定義式は、熱の伝わり方が熱伝導か熱伝達かによって異なります。
それぞれ分けて記載します。
熱伝導と熱伝達の違いを知りたい方は、以下の記事で解説しています。
熱伝導の場合
熱伝導の場合の定義式は以下になります。
$R=\dfrac{d}{k・A}$
$R$:熱抵抗[$K/W$]
$d$:熱が伝わる距離[$m$]
$k$:熱伝導率[$W/mK$]
$A$:熱を伝える面積[$m^2$]
この式から考えると、熱抵抗を小さくするためには以下の3つの方法があります。
- 熱を伝える距離を短くする
- 熱伝導率の値が大きいものに変える
- 熱を伝える面積を大きくする
つまり細くて長いプラスチックの棒よりも、広くて薄いアルミの板の方が熱抵抗が小さく、熱を伝えやすいことになります。
熱伝達の場合
熱伝達の場合の定義式は以下のようになります。
$R=\dfrac{1}{h・A}$
$R$:熱抵抗[$K/W$]
$h$:熱伝達率[$W/m^2K$]
$A$:熱を伝える面積[$m^2$]
このように熱伝達の場合は単純で、面積と熱伝達率のみによって決まります。
熱伝達率は流体の状態によって変わります。
例えば強風が吹いているときには、熱伝達率が大きくなることが挙げられます。
流体の状態をコントロールできない場合では、面積を大きくするしか方法はありません。
そのため、熱設計する上で、面積は非常に重要なパラメータとなります。
設計での熱抵抗
では設計では熱抵抗はどのように利用しているのでしょうか?
電気部品を冷却する例を考えていきます。
まず、3W発熱するチップ部品があり、温度を70度に抑えたいとします。
周囲の空気の温度を40度としたとき、どのような冷却材が必要でしょうか。
この状況を数式に表すと以下のようになります。
$T_C=T_A+R・W$
$T_C$:チップ部品の温度[$K$]
$T_A$:周囲空気の温度[$K$]
$R$:放熱部品の熱抵抗[$K/W$]
$W$:発熱量[$W$]
ここで$T_C=373K$、$T_A=313K$、$W=3W$として代入すると、$R=10K/W$と求まります。
このようにして、計算で求まった熱抵抗を満たすような放熱部材を選定するという方針になります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は熱抵抗について解説していきました。
まとめると以下のようになります。
- 熱抵抗は熱の通りにくさを表している
- 定義式は熱伝導と熱伝達で異なり、それぞれ対策方法が異なる
- 設計では、熱抵抗の値を満たすような放熱部材を選定する