皆さんは熱トラブルが生じたことはありますか?

伝熱設計は、製品の性能や信頼性に直結する重要な要素です。

理論計算では問題ないのに、熱トラブルが発生した、というケースもあります。

今回は、実際に起きやすい伝熱トラブルの例と、その改善方法を紹介したいと思います。

放熱不足による部品過熱

想定される状況

電子機器の内部に配置したICチップが、設計上の放熱条件では安全圏だった。

試作機を用いて実験してみると、短時間で温度上昇が発生。

ファンや放熱板を追加しても改善が不十分だった。

考えられる原因

機器内部の空気の流れを想定しておらず、自然対流のみでは熱が滞留している可能性が高いです。

ファンを追加しても不十分なことから、十分に風が当たる部分に部品が配置されていません。

また、放熱板の放熱面積も不足している可能性もあります。

改善策

まずヒートシンクや内部空気の流れを考慮したレイアウト変更を行います。

その上で自然対流で足りない場合は、ファンを導入して風を流せるようにしておきます。

熱流体解析を行うことで、さらに風の流れを把握することができます。

このように熱だけでなく、流体の流れまでを把握することがポイントとなります。

熱伝導不良による温度ムラ

想定される状況

機械装置に発熱部品を配置したが、一部の部位が極端に高温になり、材料の膨張や変形が発生した。

考えられる原因

発熱部品と放熱部品間の接触面の熱伝導率が低くなっており、熱が上手く伝導されていないことが考えられます。

発熱部品の熱が広がらないことで、1点に熱が集中した結果、変形を引き起こしてしまいます。

また、接触面にグリスが塗布されておらず、熱が広がらないということもあります。

改善策

まずは接触面に熱伝導グリスを塗ります

最初は十分に放熱できていても、時間が経つとグリスが流れ落ちてしまう可能性があるため、適切に保守をすることが必要です。

また、放熱部材を熱伝導率が高い材料に変更します。

同じアルミニウム合金でも、物によって熱伝導率が異なるので、注意が必要です。

環境条件の想定不足

想定される状況

屋外設置装置として設計された装置が、特定の時間や期間で熱暴走を起こすことが判明した。

考えられる原因

まず、屋外設置装置で気を付ける点として、直射日光が挙げられます。

室内環境温度を基準に設計すると、外部環境温度への考慮が抜けることがあります。

特に外装が暗い色をしていると、温度が上がりやすくなる傾向にあります。

改善策

まずは直射日光分の温度上昇を想定したマージン確保をします。

もしできない場合は、遮熱版や日光反射塗料を用いて、日射対策を行います。

対策を実施後、改めて耐熱温度を確認することが重要です。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は、熱設計でトラブルが起こりやすいケースを紹介してきました。

まとめると以下のようになります。

まとめ
  • 内部流体の流れを考慮した部品は一にする
  • 熱伝導に必要な経路を確保し、場合によってはグリスを追加する
  • 屋外設置の場合は、直射日光の影響を考慮する