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伝熱工学

魔法瓶が真空構造を使っている理由は?【伝熱工学的解説】

皆さんは魔法瓶はご存じですか?

ポットや水筒にもよく使用されていますよね。

魔法瓶には真空の層が設けられていますが、どのくらい効果があるのでしょうか。

今回は魔法瓶構造について解説していきたいと思います。

そもそも魔法瓶とは?

そもそもの話ですが、魔法瓶とは、長時間の保温や保冷を可能にした容器のことを指しています。

その原理として、瓶の液体の外側を真空の層にすることで熱伝導による放熱の影響をなくすことで、長時間の保温を可能にしています。

しかし真空の層を設けたとしても、放射熱の影響があるため、完全に放熱を0にすることはできません。

このような保温性という特性を利用して、水筒に利用されることが多いです。

検討構造

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検討イメージ図

今回は魔法瓶を円筒構造として検討していきます。

このとき放射熱による熱量は、以下の式によって表されます。

数式

Q=Aεσ(TH4TL4)

Q:放熱する熱量[W]

A:放熱する面積[m2]

ε:ステファンボルツマン定数[W/m2K4]

TH:高温側の絶対温度[K]

TL:低温側の絶対温度[K]

本来であれば、物体の形状によって決まる形態係数を乗じますが、今回は無視して考えます。

ここで比較のため、熱伝導による熱量の式も記載しておきます。

数式

Q=Akd(THTL)

k:材料の熱伝導率[W/mK]

d:瓶の層の厚み[m]

このように熱放射の場合と、熱伝導の場合によって放熱に関与するパラメータが変わってきます。

今回は内径60mm,外径70mm,高さ200mmの円筒形として計算します。

また、今回は液体の温度を100度、外気温を20度として、液体が冷える場合を考えていきます。

真空層の有無による違い

真空の放射率ε=0.15,ステファンボルツマン定数σ=5.67×108W/m2K4として計算すると、以下のようになります。

Q=0.039×0.15×5.67×108×(37342934)=3.99W

比較のため、材質をステンレスの瓶として、熱伝導の放熱を計算してみます。

瓶の厚さd=5mm,ステンレスの熱伝導率k=43W/mKとして計算すると、以下のようになります。

Q=0.039435(373293)=26.9W

このように真空の場合と比較して、ステンレスの場合は約6.7倍放熱していることが分かります。

もちろんこの計算は面積などの値を仮定しているため、一例としてお考え下さい。

材質による違い

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それでは、瓶の材質が他のものだったらどうでしょうか?

例えばガラスやプラスチックでできた瓶がありますよね。

比較のため、ステンレスより熱伝導率の小さいチタン合金、ガラス、プラスチックの3つの場合を考えてみます。

このとき各熱伝導率は、チタン合金の場合8W/mK,ガラスの場合1.38W/mK,プラスチックの場合0.2W/mKとして計算した結果が以下になります。

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各材質の放熱量

この結果を見ると、金属で瓶を作る場合、魔法瓶構造を採用することで、放熱する熱量を抑えることができます

また、同条件でも熱伝導率の小さい材質を用いることで、熱伝導による熱量を抑えることができます

しかし実際には厚みのある材質を作ることへのコストの問題や、ガラスやプラスチックの温度差・衝撃に対する強度的な問題などを総合的に判断して、ポットや水筒の材質を決定していると思われます。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回は魔法瓶の放熱について解説してきました。

まとめると以下のようになります。

まとめ
  • 魔法瓶は真空層を設けることで熱伝導による放熱を防いでいる
  • 放射熱による放熱は金属の熱伝導よりも小さい
  • 熱伝導率の小さい材質を用いることで、瓶からの放熱量は抑えることが可能
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