食材などを温めたり、冷やしたりすることはよくあると思います。
ところでこの温度変化は熱伝導と対流のどちらの効果が大きいのか、考えたことはありますでしょうか。
今回はこの熱伝導と対流の効果の影響について解説していきたいと思います。
そもそも伝導・対流の違いとは?
熱伝導とは、同じ状態の物同士で熱の受け渡しの現象です。
一方で対流とは、異なる状態の物同士で熱の受け渡しを行う現象です。
例えば熱したフライパンに手で触れてしまったとき、熱いと感じるのは熱伝導のためです。
この例では、フライパンと手という固体同士の熱の受け渡しになります。
次に熱したフライパンに流水をかけると冷えていくのは、対流による熱伝達のためです。
これはフライパンという固体と、流水という液体の異なる状態での熱の受け渡しです。
詳細な説明は以下の記事で解説しています。
ビオ数の考え方
ここで熱伝導と熱伝達の関係を表すため、ビオ数という無次元数を考えます。
ビオ数は以下の式で表されます。
$Bi=\dfrac{hL}{k}$
ただし、$L=\dfrac{V}{S}$
$Bi$:ビオ数
$h$:熱伝達率[$W/m^2K$]
$L$:代表長さ[$m$]
$k$:熱伝導率[$W/mK$]
$V$:物体の体積[$m^3$]
$S$:物体の表面積[$m^2$]
このビオ数の値について考えてみましょう。
分母は対流による熱伝達を、分子は固体の熱伝導を表しています。
まずビオ数が1より小さい場合、分母の熱伝導の方が、分子の熱伝達よりも大きくなります。
つまり熱伝導の影響が大きく、表面の温度が簡単に伝わるため、物体の温度は熱伝達によって決まります。
次にビオ数が1より大きい場合、分子の熱伝達の方が大きいことになります。
この場合は、熱伝達の影響が大きく、物体の表面温度が外気温とほぼ同じ値になるため、物体の温度は熱伝導によって決まります。
そしてビオ数が1に近い場合は、熱伝導と熱伝達の両方によって温度がきまります。
ここまでをまとめると以下のようになります。
- $Bi<<1$のとき、熱伝達の影響が大きい
- $Bi≈1$のとき、熱伝導と熱伝達両方の影響を受けている
- $Bi>>1$のとき、熱伝導の影響が大きい
冷却時の熱伝導と熱伝達の違い
それでは、どのように違いが生じるのでしょうか。
冷蔵庫の中に鉄球を入れて、冷やす場合を例に考えてみましょう。
鉄球の熱伝導率$k=53W/mK$として、球の直径を$10cm~1m$まで変化させたときのビオ数を以下のグラフに示します。
自然空冷のときの熱伝達率は$20W/m^2K$、強制空冷のときは$100W/m^2K$として計算しています。
縦軸がビオ数、横軸が球の直径を表しています。
まず自然空冷の場合は、球の直径を大きくしても、ビオ数が1よりも小さくなります。
つまり自然空冷の場合、ほぼ熱伝達によって内部温度が決まってしまいます。
一方で強制空冷の場合は、球の大きさによって、ビオ数が変わってきます。
直径約$3.3m$の場合にビオ数が1近くになるため、熱伝導と熱伝達の両方の影響を考える必要があります。
さらに球の直径を大きくしていけば、ビオ数も大きくなり、熱伝導率によって温度が決まってきます。
具体的には、$Bi=10$となる場合には、直径は$31.8m$ほど必要になります。
ここまでをまとめると、小さい部品であるほど、ビオ数が小さくなるため、熱伝達による影響が大きくなるということが考えられます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は熱伝導と対流熱伝達の効果の違いについて解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 熱伝導と熱伝達を比較するには、ビオ数の考えが必要
- ビオ数と1の比較によって、熱の伝わり方が判断できる
- 小さい部品ほどビオ数が小さくなるので、熱伝達の影響が大きい