皆さんはダンパーを考えるとき、直列繋ぎと並列繋ぎのどちらで考えていますか?
多くの場合は並列繋ぎで考えることが多いのではないでしょうか。
今回は繋ぎ方の違いについて解説していきたいと思います。
直列繋ぎと並列繋ぎについて
並列繋ぎとは、ダンパーとばねを二つ並べた状態のことを示しています。
上の図で表すと左側の状態です。
一方で直列繋ぎは、上の図で右側の状態で、質点・ばね・ダンパーの順に並べたものを示しています。
今回は図の状態について、それぞれ変位を検討していきます。
数式による違い
ここで数式による違いを考えてみましょう。
それぞれ質量$m$の物体に、振動荷重を加えた時を考えます。
並列繋ぎの場合
並列繋ぎの運動方程式は以下のようになります。
$m\dfrac{d^2x}{dt^2}+c\dfrac{dx}{dt}+kx=Fcos(ωt)$
このときの解$x$は以下の式で表されます。
$x=\dfrac{F}{(-mω^2+k)^2+(cω)^2}((-mω^2+k)cos(ωt)+(cω)sin(ωt))$
この場合の共振についての詳細は、以下の記事で解説しています。
直列繋ぎの場合
次に直列繋ぎの場合を考えてみましょう。
この場合は、ばねの伸びと質量の変位が異なるので、並列繋ぎの場合と同じ運動方程式を使用することはできません。
図の質量$m$での力のつり合いと、ばねの復元力とダンパーの減衰力が等しいことを用いて考えると、以下の式で表されます。
$m\dfrac{d^3x}{dt^3}+\dfrac{mk}{c}\dfrac{d^2x}{dt^2}+k\dfrac{dx}{dt}=ωFcos(ωt)$
このときの解は以下のようになります。
$x=\dfrac{F}{(-mω^2+k)^2+(c’ω)^2}((-c’ω)cos(ωt)+(-mω^2+k)sin(ωt))$
ただし、$c’=\dfrac{mk}{c}$とする
並列繋ぎと比較すると、係数を$c’=\dfrac{mk}{c}$と考えることで、近い形の解にすることができます。
振動振幅の違い
挙動は2項目の値の大きさによって変わってきます。
この2項目は振動の減衰に関与する係数なので、値を大きくできている方が、振幅を小さくすることができます。
つまり$c$と$\dfrac{mk}{c}$のどちらが大きいかで3パターンを比較します。
cの値が小さい時
$c < \dfrac{mk}{c}$のときを考えます。
このとき直列繋ぎの方が減衰する力が大きいので、直列繋ぎの場合の方が振幅が小さくなります。
グラフで表すと以下のようになります。
以下、グラフの縦軸は変位、横軸は時間を表しています。
cの値が同じとき
$c = \dfrac{mk}{c}$のときは、減衰する力が直列と並列で同じになります。
グラフで表すと以下のようになります。
直列繋ぎでも並列繋ぎでも、ほぼ同じ振幅になっていることが分かると思います。
cの値が大きい時
$c > \dfrac{mk}{c}$のときを考えると、並列繋ぎの方が減衰する力が大きいことを示しています。
つまり並列繋ぎの方が振幅が小さくなります。
グラフで表すと以下のようになります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はダンパーの繋ぎ方による違いを解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 直列繋ぎと並列繋ぎでは、適用する方程式が異なる
- $c$と$\dfrac{mk}{c}$の大小関係で、振幅の大小が変わる
- $c<\dfrac{mk}{c}$のときは直列繋ぎの方が、$c>\dfrac{mk}{c}$のときは並列繋ぎの方が振幅が小さい