皆さんは橋などの板状の物体の共振を考えたことはありますか?
当サイトでも、質点の共振は考えたことがありますが、板の共振は少し異なります。
今回は板の共振について解説していきたいと思います。
前提条件
両端単純支持の直方体の板を想定します。
そのため、板の位置が0の場合と$L$(板の全長の位置)の場合には、変位と発生するモーメントが0になります。
振動は板のたわみ方向の振動について考えます。
板の運動方程式
板の振動についての運動方程式は以下の式で表されます。
$ρA\dfrac{∂^2y}{∂t^2}+EI\dfrac{∂^4y}{∂x^4}=0$・・・①
$y$:変位[$m$]
$x$:位置[$m$]
$t$:時間[$s$]
$ρ$:密度[$kg/m^3$]
$A$:断面積[$m^2$]
$E$:ヤング率[$Pa$]
$I$:断面二次モーメント[$m^4$]
この方程式を解くと、板の振動が分かります。
波の性質を表現しているため、波動方程式と呼ばれることもあります。
今回は共振周波数について解くと以下のようになります。
$f_n=\dfrac{λ_n^2}{2π}\sqrt{\dfrac{EI}{ρA}}$・・・②
ただし$λ_n=\dfrac{nπ}{L}$を満たす定数
$f_n$:n次モードの共振周波数[$/s$]
$n$:1以上の整数
$l$:板の長さ[$m$]
ちなみに質点についての共振周波数については、以下の記事で解説しています。
板厚による共振周波数の違い
ここからは具体的に式②の値を求めていきます。
板厚の大きさがどのくらい影響を及ぼしているのかを比較します。
材質を鉄として計算するため、ヤング率$E=211GPa$、密度$ρ=7800kg/m^3$として計算します。
板の長さ$L=0.1m$、幅$0.01m$としたとき、板厚を$1mm$から大きくしていった場合の結果を以下のグラフに示します。
縦軸が共振周波数、横軸が板厚を示しています。
結果を見ると、板厚を大きくすることで共振周波数を大きくしていくことが可能です。
また、1次モード、2次モード、3次モードの差を見てみると、板厚が大きくなるほど各モードの共振周波数の差も大きくなっていることが分かると思います。
つまり板厚を大きくするほど、共振する周波数の間隔を大きくなりますので、適用できる周波数領域も広くすることが可能です。
共振周波数を変化させるには?
前述のように板厚を大きくすることで共振周波数を大きくすることも可能ですが、ここで共振周波数を大きくする方法についてまとめておきます。
式②から考えると、共振周波数は以下の4つのパラメータを調整することで変更可能です。
- 板厚を大きくする
- ヤング率$E$の大きい材料を用いる
- 密度の小さい材料$ρ$を使う
- 板の長さ$L$を小さくする
ちなみに板の幅ですが、式②のルート内の計算式で、分母と分子の両方に含まれているため、幅は共振周波数に影響しません。
ただし、実際には3次元的に振動が加わるため、別方向の振動に耐えるためには幅を大きくすることも重要となります。
また材料を変える場合は、ヤング率と密度の両方が変わるため、注意が必要です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は板の共振について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- 板の共振の場合は、質点の共振と異なる
- 板厚を大きくすることで、共振周波数も大きくすることができる
- 共振周波数を変える場合には、4つのパラメータで調整できる