皆さんは「ねじ」について考えてきたことはありますか?
掃除機や洗濯機のような製品に限らず、ペットボトルのキャップなど身近なところにねじが使用されていると思います。
今となっては、ねじなしで製品を作ることは考えられません。
今回はねじの締結力について紹介していきたいと思います。
ねじの締結イメージ
ところでねじの締結はどのようになっているのでしょうか。
極端に表した図が以下になります。
ねじを締め込むことによって締結部材に圧縮荷重がかかります。
その分、反作用によってねじに引張荷重が発生します。
このねじに生じる引張荷重によって発生する弾性エネルギーによって締結が行われています。
締結時の荷重
ねじを締結するときには、荷重が発生します。
それはなぜ発生するのでしょうか。
大きく分けて3つの部分に荷重が発生しています。
ねじの締結を数式で表すと以下のようになります。
$T=\dfrac{F}{2}(\dfrac{dμ_S}{cosα}+\dfrac{P}{π}+d_Wμ_W)$・・・①
ただし$d_W=\dfrac{2(d_0^3-d_h^3)}{3(d_0^2-d_h^2)}$
$T$:締付トルク[$N・m$]
$F$:締結力(軸力)[$N$]
$d$:ねじの有効径[$m$]
$μ_S$:ねじ面の摩擦係数
$α$:ねじ山の半角(30°)
$P$:ねじピッチ[$m$]
$d_W$:等価摩擦直径[$m$]
$μ_W$:座面の摩擦係数
$d_0$:ねじ座面の外径[$m$]
$d_h$:ねじ穴径[$m$]
式①の( )の中を考えてみましょう。
1項目は、おねじとめねじの摩擦によって生じる摩擦を示しています。
2項目は、ねじの締結時の伸びに変換される力を示しています。
3項目は、ねじ頭と座面との摩擦によって発生する力を示しています。
つまり締結時の力としては、ねじの摩擦、ねじの伸び、座面の摩擦の3つに分類されます。
具体的に計算してみましょう。
左辺の締付トルクは、ねじ径と締結部材の材料によって目安が決まっています。
今回はM5で標準締付トルクの値$3N・m$を採用します。
すると締結力$F≒2168N$となります。
このときの内訳は、以下のようになっています。
- おねじとめねじの摩擦力:$1.1N$ (約37.4%)
- ねじの伸びに変換される力:$0.28N$ (約9.2%)
- ねじと座面の間の摩擦力:$1.6N$ (約53.4%)
このように、①と③の合計で、締結力のうち、90%以上は摩擦に使われていることが分かります。
参考元サイト:ねじ締結と摩擦係数
締結力を大きくするには?
ねじの締結力を大きくするにはどうすればいいのでしょうか?
式①から考えてみましょう。
締付トルクを一定として考えると、右辺の( )で囲まれた値を小さくする必要があります。
ねじの径を一定とすると、$d,P,α$の値は変えられません。
すると締結力は摩擦係数の$μ$の値に依存していると考えられます。
ねじ山と座面の摩擦係数の値は同じとして考えたとき、摩擦係数と締結力の関係を示したものが以下のグラフになります。
縦軸が締結力、横軸が摩擦係数を表しています。
摩擦係数の値に反比例して締結力が落ちていっていることが分かると思います。
このように締結力を大きくするには、摩擦係数を小さくすることが有効と考えられます。
座面の摩擦係数とねじの摩擦係数のどちらが効果が高い?
前項では、摩擦係数は同じ値として考えてきましたが、実際には大きさが異なります。
どちらの方が効果が大きいのでしょうか。
縦軸が締結力、横軸が座面の摩擦係数を表したものが以下のグラフです。
各プロットの色は、ねじの摩擦係数を表しています。
結果を見ると、ねじの摩擦係数が0.1、座面の摩擦係数が0.3のときは約2000$N$ですが、ねじの摩擦係数が0.3、座面の摩擦係数が0.1のときは約2400$N$となっています。
このように考えていくと、座面の摩擦係数の方が締結力に対する効果が大きいと考えられます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はねじの締結力について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- ねじの締結時の荷重は90%以上摩擦に使われている
- 締結力を上げるには摩擦力を小さくする必要がある
- ねじと座面では、座面の摩擦係数の方が効果が大きい