皆さんは弦楽器を演奏したことはありますか。
弦を弾くことによって様々な音が出せますよね。
ところで音の高さはどのように変えているのでしょうか。
今回は弦楽器の音の高さについて、機械力学的に解説していきたいと思います。
音の高さとは?
まず音が高いとはどういうことなのでしょうか。
高い音は、周波数が高いということを表しています。
ここで周波数とは、1秒間に何回振動するかを表した値です。
また周波数は、以下の関係式があります。
$f=\dfrac{ω}{2π}$
$f$:周波数[$Hz$]
$ω$:角速度[$/s$]
このため周波数の高い音を出すためには、角振動数を大きくすることが必要になります。
弦の運動は?
次に弦の運動について考えていきます。
弦の一次元の運動方程式は、以下の式によって表されます。
$ρ\dfrac{∂^2u}{∂t^2}-T_0\dfrac{∂^2u}{∂x^2}=0$
$ρ$:弦の線密度[$kg/m$]
$T_0$:弦の張力[$N$]
$u$:弦の変位[$m$]
この式は波動方程式と呼ばれることもあります。
今回は弦の長さを$l$[$m$]、両端固定の自由振動とすると、一般解は以下のようになります。
$u(x,t)=C・sin(\dfrac{nπ}{l}x)・(A・cos(\dfrac{nπ}{l}\sqrt{\dfrac{T_0}{ρ}}t)+B・sin(\dfrac{nπ}{l}\sqrt{\dfrac{T_0}{ρ}}t)$
$A,B,C$:初期条件によって決まる定数
$n=1,2,3・・・$
少し複雑な式になってしまいましたが、今回必要な角振動数はcosの( )の中になります。
角振動数を$ω_n$とすると、以下の式になります。
$ω_n=\dfrac{nπ}{l}\sqrt{\dfrac{T_0}{ρ}}$
ここで角振動数はnの値の数だけ存在することになるため、理論上は無限個存在することになります。
弦の振動
実際に弦の運動はどのようになるのでしょうか。
値の大きさは各定数によって異なりますが、以下のようになります。
nの値が大きくなるほど波長$λ$の大きさが小さくなります。
音を高くする方法
では、方程式の解から音を高くする方法を考えていきます。
音を1オクターブ高くすると仮定すると、振動数を2倍にすることになります。
角振動数から考えると、方法は3つ存在します。
弦の長さを短くする
まず角振動数は弦の長さに反比例しているので、弦を短くすれば音は高くなります。
具体的には、弦の長さを半分にすれば音を1オクターブ高くできます。
実際の例で考えてみると、バイオリンの大きさと音の高さの関係が挙げられます。
人の手で楽に持ち上げられる、全長60cm程度のバイオリンであれば、高い音を出すことができます。
逆に全長が2m近くあるコントラバスだったら、同じ音でも低くなります。
弦の張力を大きくする
次に弦の張力ですが、角振動数と張力は1/2乗で比例関係にあるので、張力を大きくすれば音を高くできます。
実例としては、ギターのチューニングが挙げられます。
弦を固定している部分の張力を大きくすることで、音を高くすることができます。
ちなみに音を1オクターブ高くしているということは、張力を現状の4倍大きくしていることになります。
弦の線密度を小さくする
3つ目の方法は弦の線密度を小さくすることが挙げられます。
弦自体を軽い材料に変更することで、音を高くすることが可能です。
具体的には、線密度を1/4にすることで、1オクターブ音を高くすることが可能です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は弦楽器の音の高さについて解説していきました。
まとめると以下のようになります。
- 音を高くするということは、振動数を大きくすることを表している
- 弦の角振動数は、計算上無限に存在している
- 音を高くする方法は、弦の長さ、張力、線密度の3種類を変える方法が考えられる