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伝熱工学

熱伝導のTIMって何?【伝熱工学的解説】

皆さんはTIMという言葉を聞いたことがありますか。

放熱を行うときには、必ずと言っていいほど使用されます。

今回はTIMについて解説していきたいと思います。

TIMって何の略?

TIMとは、Thermal Interface Materialの略です。

物体間の熱の移動を助ける働きを持つ材料です。

電気部品で発熱量が多い場合には、よく使われています。

TIMを使う理由は?

例えば、チップ部品の熱を放熱する場合を考えます。

この場合、チップ部品から空気へと放熱することになります。

しかし空気の熱伝導率は40度でも$0.0272W/mK$ほどです。

鉄の熱伝導率は約$50W/mK$、アルミの熱伝導率は約$200W/mK$ということを考えれば、空気がどれだけ熱を伝えにくいかよくわかるのではないでしょうか。

つまり、チップ部品から空気への放熱は効率が悪いのです。

そこで発熱量の大きい部品は、部品に金属の放熱部品を取り付けて、熱を逃がしています。

放熱部品については、以下の記事で解説しています。

ここで放熱部品とチップ部品の間に、空気が入り込むことがあります。

これは、部品表面を完全な平らにできないためです。

するとせっかく放熱部品を取り付けても、十分に放熱することができません。

そのため、放熱部品とチップ部品の間にはTIMを入れて、放熱効率を良くすることが必要です

TIMの有無によってどのくらい違う?

TIMの有無でどのくらい変わるのでしょうか。

60度のチップ部品を20度の空気へ放熱する場合を考えてみましょう。

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検討モデル

このとき、放熱の式は以下のように表されます。

数式

$Q=(T_1-T_4)/(\dfrac{d_1}{k_1}+\dfrac{d_2}{k_2}+\dfrac{1}{h})$

$Q$:単位面積当たりの熱量[$W/m^2$]

$T_1$:チップ部品の温度[$K$]

$T_4$:空気の温度[$K$]

$d_1$:TIMまたは空気の厚み[$m$]

$k_1$:TIMまたは空気の熱伝導率[$W/mK$]

$d_2$:放熱部材の厚み[$m$]

$k_2$:放熱部材の熱伝導率[$W/mK$]

$h$:放熱部材から空気への熱伝達率[$W/m^2K$]

$d_1=0.001m、d_2=0.01m、k_2=200W/mK、h=5W/m^2K$として、計算します。

ここでTIMの熱伝導率$k_1$を$3W/mK$の場合と$0.0272W/mK$の場合で比較すると、次のようになります。

$Q_{TIM}=199.6W/m^2$

$Q_{空気}=168.9W/m^2$

このようにたった$1mm$程度の隙間だったとしても、TIMを用いた方が熱量が大きくなります。

つまりTIMを用いた方が多くの熱を逃がすことが可能となります。

当然$d_1$の厚みが大きくなればなるほど、TIMを用いた放熱も大きくなります。

TIMの種類

TIMにはいくつかの種類があります。

一番身近な例であれば、フライパンで炒めるときの食用油でしょうか。

この食用油も、フライパンの熱を食材に伝えるという役割で、立派なTIMとしての役割を果たしています。

液体のTIM

液体のTIMには代表例として油が挙げられます。

「サーマルグリス」と呼ばれることもあります。

入手が容易で大量入手も可能ですが、組み立て工程が大変になることや、長年使っていると広がって漏れてしまう可能性があるため、注意が必要です。

固体のTIM

固体のTIMには熱伝導シートが挙げられます。

このシートはゴムのような素材が使われており、潰すことで隙間をなくすことができています。

メリットとしては、組み立てが簡単なことが挙げられますが、デメリットとして、構造が複雑になりやすいこと、潰し量の調整のため、綿密な公差管理が必要という点が挙げられます。

まとめ

いかがだったでしょうか。

今回はTIMについて解説してきました。

まとめると以下のようになります。

まとめ
  • TIMはThermal Interface Materialの略
  • 放熱部材を取り付けるときの手助けとして用いられる
  • TIMには液体と固体の種類があり、特徴を理解して使用することが重要
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