皆さんは温泉やサウナは好きですか?
寒い日が続くと、温泉に入ったり、サウナに入ったりして温まりたいところですよね。
ところで、サウナの温度は70~100度になることもあるようですが、少しサウナに入ったくらいでは火傷しませんよね。
なぜでしょうか。
今回は伝熱工学的に解説していきたいと思います。
前提条件
今回は簡単のため、条件はサウナに入った瞬間の人間の皮膚の状態とし、短い時間のため、空気の対流による熱伝達を無視して考えます。
空気と人間が触れる時間も瞬間的なので、無限遠方での温度は変化がないものと考え、人間と空気はそれぞれ無限に広がるもの(半無限物体)として考えます。
サウナに入ったときの皮膚の温度
前提条件の半無限物体の短時間の接触は、以下の式で表されます。
$T_S=\frac{\sqrt{ρ_1・c_1・k_1}・T_1+\sqrt{ρ_2・c_2・k_2}・T_2}{\sqrt{ρ_1・c_1・k_1}+\sqrt{ρ_2・c_2・k_2}}$
$T_S$:皮膚の温度[$℃$]
$ρ$:密度[$kg/m^3$]
$c$:比熱[$J/kg・K$]
$k$:熱伝導率[$W/m・K$]
$T$:初期温度[$℃$]
添え字1:接触する物体の物性値
添え字2:皮膚の物性値
この式で計算すると、皮膚の表面温度は約37.3度になります。
人間の皮膚の温度とあまり変わらないですよね。
このようにサウナの場合は、空気の温度が皮膚へ十分に伝わらないため、火傷しないということになります。
サウナではなく熱湯だったら?
ここでもし、サウナではなく100度の熱湯の場合を考えてみます。
数式は同じなので、密度、比熱、熱伝導率のみ以下の表の値に変更します。
この場合、皮膚の表面温度は72.2度になります。
空気と異なり、大きく温度が上がりました。
熱湯の場合は温度を伝えやすいので、皮膚の温度も上がりやすくなります。
そのため、100度の熱湯だったら火傷してしまうでしょう。
サウナの椅子で火傷しない?
次にサウナに設置してある固体に触れた場合を考えます。
椅子は大体の場合は、木でできていると思いますが、木の場合と鉄の場合を考えてみます。
物性値は以下の表の通りとし、温度は100度とします。
このときの皮膚の表面温度は、木の場合は約46.3度、鉄の場合は約95.4度となります。
木の場合は空気と同じで、温度が伝わりにくく、鉄の場合は水と同じで、温度が伝わりやすくなっています。
これではサウナの中の物は木のような物で作らないと火傷してしまいます。
木でも温度がやや高めですが、タオルなどを敷いておけばなんとか座れる温度かと思います。
どの物性値の影響が大きい?
ここで、密度、比熱、熱伝導率のどれが最も影響が大きいのでしょうか。
それぞれ鉄の物性値を0%~120%まで1種類だけ変化させたときの温度を以下のグラフに示します。
縦軸が皮膚の温度、横軸が物性値の変化量を示します。
結果を見ると、どの物性値を変化させても同じ挙動になります。
また、物性値を1~2%程度まで変化させられれば温度も下がりますが、それ以外ではほぼ変化はありません。
つまり熱い鉄は密度、比熱、熱伝導率のどれかが大きいから火傷しやすいのではなく、3つの積が大きいために火傷しやすいのです。
一方で空気や木は鉄よりも比熱は大きいですが、密度と熱伝導率が圧倒的に小さいので温度を伝えにくくなっています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はサウナで火傷しない理由を解説していきました。
まとめると以下のようになります。
- 温度の高い空気や木は温度を伝えにくいため火傷しにくい
- 温度の高い水や鉄は温度を伝えやすいので火傷しやすい
- 温度の伝えやすさは密度、比熱、熱伝導率の積によって決まり、どれか一つだけを少し変化させても影響は小さい