皆さんはヒートシンクという部品はご存じでしょうか。
伝熱工学の世界ではよく使われる部品ですが、一体何のために使用するのでしょうか。
今回はヒートシンクについて解説してきたいと思います。
使用する目的
ヒートシンクは発熱する部品に取り付けて、放熱しやすくするために用いられます。
まず放熱には伝導、対流、輻射の3つがあります。
ヒートシンクなしで放熱する場合、部品から直接空気中へ放熱することになります。
このときの部品から空気への放熱は以下の数式で表されます。
$Q=h・A(T_C-T_A)$
$Q$:放熱量[$W$]
$h$:部品と空気の熱伝達率[$W/m^2K$]
$A$:放熱面積[$m^2$]
$T_C$:部品表面温度[$K$]
$T_A$:空気温度[$K$]
この式を変形してみると、以下のようになります。
$\dfrac{1}{h・A}=\dfrac{T_C-T_A}{Q}$
この式の左辺は熱抵抗と呼ばれ、単位は[$K/W$]です。
熱抵抗は熱の放熱しにくさを表しており、値が小さいほど放熱しやすいことになります。
つまり放熱しやすくするためには、$h$または$A$の値を大きくするしかありません。
熱伝達率$h$を大きくするためには、空気の流速を大きくするという手段があります。
例えば、FANを取り付けて風を流すという方法が代表例です。
一方で面積$A$を大きくするという方法が、ヒートシンクを取り付ける方法に当たります。
ちなみに熱抵抗については、以下の記事で紹介しています。
ヒートシンクの材質
放熱するという性質を考えた場合、熱を通しやすい部品の方が良いですよね。
そのため、熱伝導率$W/m^2K$の値が大きい材質が用いられます。
ところで熱を伝えやすい材質とは何でしょうか。
ヒートシンクに用いられる材質はアルミが多いです。
これは熱伝導率とコストのバランスを考慮した結果です。
以下に各板金材料の熱伝導率とコスト係数の関係を示したグラフを示します。
コスト係数とは、材料のコストを比として考えた値です。
厳密には物価の上昇などによって、コストが変動しますので、目安としてお考え下さい。
横軸はコスト係数を表しており、縦軸は熱伝導率を示しています。
つまり、最も左上の材料が安くて熱伝導率の良い、理想的な材料ということになります。
しかし左上には代表的な材料がないので、他の材料を使うしかありません。
最も熱伝導率が大きいのは銅ですが、コストの都合で使用されないことが多いです。
そのため2つ目に熱伝導率の大きく、コストもステンレスに近いアルミが多く適用されています。
ここで各材料の代表例として、SPCC(鉄)、SUS304(ステンレス)、A5052(アルミ)、C1100(銅)としています。
コスト係数とは、単位体積あたりの大まかな価格です。(厳密な価格は、そのときの物価や取り数、取引先などによってコストが変わるので、大まかな指数として扱っている値です。
ヒートシンク形状の種類
ヒートシンクには断面が「山」のような形をしているものや、剣山のように針がたくさん刺さっているような形状があります。
これは前述の通り、表面積が大きいほど放熱しやすくなるためです。
また、空気の流れによって向きや種類を決めていくことが多いです。
ヒートシンクの表面処理
ヒートシンクには、表面に処理を行うことが多いです。
それはアルマイト処理と呼ばれる表面処理を行っています。
これも面積を増やして表面から放熱しやすくするための処理です。
一方で黒アルマイト処理という方法もあります。
これは、熱輻射の原理を使用して、放熱しやすくするという方法です。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はヒートシンクについて解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- ヒートシンクは部品の放熱をしやすくするために取り付ける
- 材質は熱伝導率とコストのバランスからアルミが採用されることが多い
- 放熱性を高めるために、形状や表面処理を工夫することもある