<景品表示法に基づく表記>本サイトのコンテンツには、商品プロモーションが含まれている場合があります。

機械力学

機械工学のダンパーって何?【機械力学の基礎解説】

皆さんはダンパーって聞いたことがありますか?

ショックアブソーバーと呼ばれることもあります。

車に詳しい方なら聞いたことがあるかもしれませんが、機械力学的にはとても意味のある特性を持っています。

今回は数式を用いてダンパーの役割について解説していきたいと思います。

ダンパーとは

ダンパーとは、運動エネルギーを吸収する機構ことを指します。

数式では、減衰係数$c$[$N・s/m$]として表され、物体の動く速度に比例して減衰させる効果を持っています。

検討モデル

f:id:karasu_16:20211122140316j:plain今回は検討モデルとして、質量mの物体の振動について考えていきます。

重力の影響は無視し、物体がばね定数$k$[ $N/m$ ]のばねに繋がれている状態を考えます。

このときダンパーの減衰定数$c$[$N・s/m$]とし、ばねに並列に繋がれている状態とします。

振動は荷重を加えず、初期条件として初速度を与えた状態を考えます。

そして比較のために、ダンパーなし、ばねのみで物体を支えている状態も用意しています。

振動の運動方程式

f:id:karasu_16:20211122134603j:plain

ダンパーなしの場合

まずダンパーなしで、ばねのみによる固定をした場合の運動を考えていきます。

このときの運動方程式は以下のようになります。

数式

$m\dfrac{d^2x}{dt^2}+kx=0$

$m$:物体の質量[$kg$]

$k$:ばね定数[$N/m$]

$x$:物体の変位[$m$]

$t$:経過時間[$s$]

この方程式の解は初期条件によって決まります。

初期条件は時間$t=0$のとき、変位$x=0$、初速度$v_0$とした場合、解は以下のようになります。

数式

$x=\dfrac{v_0}{ω}sin(ωt)$

$ω$:角速度[$/s$]($=\sqrt{\dfrac{k}{m}}$)

振動の時間変化をグラフで表すと、以下のようになります。

f:id:karasu_16:20211122131446p:plain
ダンパーなしの振動のイメージ

この振動は振動の振幅(最初の位置から最大で移動する長さ)は$\dfrac{v_0}{ω}$のままで動き続ける振動になります。

このままでは振動を抑える力がないので、永久に動き続けてしまいます

そこで次はダンパーがある場合の動きについて考えていきます。

ダンパーありの場合

ダンパーありの場合の運動方程式は以下のようになります。

数式

$m\dfrac{d^2x}{dt^2}+c\dfrac{dx}{dt}+kx=0$

$c$:減衰係数[$N・s/m$]

この方程式の解も初期条件によって決まります。

定数の値によって大きく3つのパターンに変わりますが、今回は簡単のため、$c^2-4mk<0$を満たす条件と仮定します。

このときの初期条件も時間t=0のとき、初期変位$x=0$、初速度$v_0$とすると、解は以下のようになります。

数式

$x=\dfrac{v_0}{ω}sin(ωt)・e^{-c・t/(2・m)}$

振動の時間変化をグラフで表すと、以下のようになります。

f:id:karasu_16:20211122132528p:plain
ダンパーありの振動のイメージ

先ほどのグラフと比較すると、時間を経過するたびに振幅が小さくなり、だんだんと0に近づいていくことが分かります

式と比較してみると、変位に$e^{-c・t/(2・m)}$を掛けており、この値が振動を減衰させる役割を持っています。

(この値はネイピア数”$e$”を底とする対数を表しており、”$e$”の負のべき乗は減少関数で、0に近づいていく性質を持っています。)

ダンパーの有無による違い

ここでダンパーあり・なしの2つのグラフを並べてみると以下のようになります。

f:id:karasu_16:20211122133315p:plain
時間変化のイメージ

各定数は$m=0.5kg、c=1N・s/m、k=5N/m、v_0=5m/s$としてグラフを作成しています。

ダンパーの効果によって、時間経過で振動が収まっていく様子が分かりますよね。

グラフの条件では、1$m$の振幅が、わずか3秒で0$m$近くまで収まっています。
このように機械力学の世界では、ダンパーを用いることによって、振動振幅を制御することが可能になります

例えば、車にエンジンをかけたとき、最初は大きな振動があっても、段々収まっていくと思います。

これはダンパーの効果が大きく貢献しているためです。

(逆に振動が収まらなかったら、怖くて運転できませんよね。)

終わりに

いかがだったでしょうか。

今回はダンパーの役割について紹介してきました。

意外と知られていないかもしれませんが、振動を抑える重要な役割を担っていることが分かったと思います。

まとめると以下のようになります。

まとめ
  • ダンパーとは、運動エネルギーを吸収する機構
  • ダンパーがない場合、振動すると動き続けてしまう
  • 適切なダンパーを使用することで、振動を抑えることが可能
関連記事