皆さんは摩擦・摩耗対策を行っていますか?
摺動部・軸受など、金属同士や異材間の接触では摩擦が発生し、この摩擦を放っておくと、寿命や性能に影響を及ぼしてしまいます。
今回は摩耗のメカニズムと対策方法について解説していきたいと思います。
摩擦と摩耗の違いとは?
まず、摩擦と摩耗の違いについて説明します。
どちらも物体同士の接触に関係しますが、意味と役割は異なります。
以下の表にまとめました。
| 項目 | 摩擦 | 摩耗 |
|---|---|---|
| 定義 | 物体が接触して相対運動するときの抵抗力 | 摩擦や衝突によって、接触面の材料が削り取られる現象 |
| 性質 | 力学的現象 | 材料的現象 |
| 影響 | 運動・エネルギーロス | 寿命・信頼性低下 |
| 抑制法 | 潤滑剤・表面処理 | 材料選定・構造設計 |
つまり、摩擦は力を表しており、摩耗は損傷を表しています。
摩擦があることによって運動抑制できますが、その結果として摩耗を促進します。
したがって、機械設計では必要最小限の摩擦を維持し、摩耗を抑えることが重要となります。
摩耗とは?
そもそも摩耗とは、物体表面が削り取られる現象のことを指します。
摩耗の中でも複数種類があり、主に以下の種類があります。
| 種類 | 主な原因 | 発生しやすい部品 |
|---|---|---|
| アブレシブ摩耗 | 硬い粒子が表面を引っかく | ギア・スライド部品 |
| アデシブ摩耗 | 表面同士が局所的に凝着して剥がれる | 摺動部 |
| 腐食摩耗 | 摩擦と化学反応が同時進行 | 薬液環境 |
| 疲労摩耗 | 繰り返し荷重による表面剥離 | ローラー・転がり軸受 |
| エロージョン | 流体中の粒子が衝突 | ポンプ・配管 |
摩耗を減らすための戦略
摩耗を抑えるための方針としては、摩擦の低減、表面の強化、接触の最適化という3つの方針があります。
- 摩擦係数を下げる:潤滑剤の塗布の他に材質選定や表面処理を行います
- 表面強度を上げる:コーティングや複合材料を適用します
- 接触形状を最適化:荷重分散や間隙を作ります
これらの方法の中で、材質選定、表面処理、構造の3つについて順に説明していきます。
摩耗に強い材料
摩耗対策には、材料選定が非常に重要です。
主な材料として以下のような物が挙げられます。
| 材料 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 炭素鋼 | 熱処理で表面硬化が可能 | 軸、ギア |
| 焼き入れ鋼 | 高硬な鋼 | 切削工具、金型 |
| ステンレス鋼 | 腐食摩耗に強い | 軸受、食品機械 |
| 銅合金 | 事故潤滑性あり | スライド部 |
| エンジニアリングプラスチック | 軽量・低摩擦 | 摺動部材 |
表面処理による摩耗対策
金属材料を使用している場合、表面処理によって耐摩耗性を大きく改善できます。
具体的には、以下のような処理方法が挙げられます。
| 処理方法 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| 焼き入れ | 表面硬化が可能 | シャフト |
| 窒化処理 | 高硬度層を生成し、寸法変化が少ない | ギア |
| DLCコーティング | 低摩擦でメンテナンス削減可能 | 切削工具 |
| 硬質クロムメッキ | 防錆も可能 | 油圧ロッド |
構造による摩耗対策
材料や表面処理で対応ができない場合、構造設計の工夫でも摩耗を防止することができます。
例えば、以下のような方法が挙げられます。
- 接触面積を広げる:面圧を下げ、摩耗を抑制
- 交換部品化:摩耗しやすい部品を交換できるようにしてメンテナンスで対応
- 潤滑経路の確保:オイルやグリスが行き届く形状に変更
- 弾性部品の併用:微小の変異を吸収し、接触を安定化
摩耗試験ツール
摩耗試験を行う場合、以下のような試験ツールが役に立ちます。
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まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は摩擦・摩耗に強い材料と設計法について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
まとめ
- 摩擦は力を表しており、摩耗は損傷を表す
- 摩耗を減らすためには、摩擦の低減、表面の強化、接触の最適化という方法が考えられる
- 具体的には、材質選定、表面処理、構造という3つのアプローチがある



