ネジ締結の基本解説~ボルトサイズ・締付トルク・ゆるみ防止法~
機械設計において、最も使用頻度の高い部品が「ネジ」です。
しかし実際の現場では、サイズ選びの誤りや締付トルク不足、ゆるみ対策の不備など、ネジトラブルが後を絶ちません。
今回は、ネジ締結の基本について、解説していきたいと思います。
ネジサイズの決め方
呼び系の決め方
ネジ径は単純に大きいほうがいい、というわけではありません。
無駄に大きいネジを使うと、組み立てが大変になる、質量が重くなる、コストが上がるなどの不都合が生じます。
重要なのは、荷重に対して十分な軸力が出せるか、という点になります。
ネジ径と応力の関係は、以下の式によって求められます。
$σ=F/A_s$
$A_s=\dfrac{π}{4}×(\dfrac{d_2+d_3}{2})^2$
$σ$:ネジにかかる応力[$Pa$]
$F$:ネジにかかる力[$N$]
$A_s$:ネジの有効断面積[$mm^2$]
$d_2$:オネジの有効径[$mm$]
$d_3$:オネジの谷径からネジ高さの1/6を減じた値[$mm$]
一般に有効断面積はネジ径が大きいほど大きくなります。
許容応力を満たすようにネジ径を決めることが重要です。
有効ネジ長さの決め方
有効ネジ長さは、ネジ穴に何mm分組み込むか、という点で決めることができます。
薄板に組み込む場合は、十分にネジが勘合しない可能性があるため、ナット固定や圧入ナットの使用を検討します。
強度区分の決め方
ネジの強度区分にはいくつかの種類があります。
以下に代表例を挙げます。
- 強度区分8.8:一般機械の標準
- 強度区分10.9:振動の多い場所に使用
- 強度区分12.9:高耐荷重用だが、衝撃に弱い
締付トルクの決め方
締付トルクは、摩擦によって値が大きく変わります。
以下の式によって、締付トルクを求めることができます。
$T=k・F・d$
$T$:ネジの締付トルク[$N・m$]
$k$:トルク係数(座面の摩擦に関係する値)
$F$:ネジの軸力[$N$]
$d$:ネジ径[$mm$]
この式を見てみると、ネジ径の他に、摩擦が影響しているということが分かると思います。
軸力と座面の摩擦の影響を考慮して、締付トルクを決めることが重要です。
トルクの管理方法
トルクの管理には、トルクドライバーやトルクレンチで管理することが一般的です。
また締め方もネジを順番に締めていくのではなく、対角に締めて、面にムラが出ないようにすることも有効です。
ネジにかかる軸力を意識して固定しましょう。
ゆるみ防止の方法
まずネジが緩む主な原因は以下のような物があります。
- 振動
- 衝撃
- 座面の陥没
- 温度変化
- 経年劣化による摩耗
このような環境が重なると、ネジだけではすぐに緩んでしまいます。
代表的な対策は以下の表にまとめました。
| 対策 | 特徴 |
|---|---|
| 平ワッシャ | 座面を広く確保できる |
| ナイロンナット | 振動に強いが高温には弱くなる |
| ダブルナット | 締結力が大きく、ゆるみ防止効果も大きい |
| ゆるみ止め剤の塗布 | 手軽で効果的だが、分解不可 |
| スリ割りナット+割ピン | 絶対に緩んでは困る部分に利用 |
| 皿バネ | 軸力を維持しやすく高荷重に強い |
このように環境条件を考慮した設計が必要となります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回はネジ締結の基本について解説してきました。
まとめると以下のようになります。
- ネジサイズは強度を考慮して決める
- 締付トルクは軸力を考慮して決める
- ゆるみ防止方法は使用環境を考慮して決める




